長谷川 彩

耐候性鋼橋梁の腐食量予測に関する研究 

岩崎 英治

 近年,無塗装で使用できる耐候性鋼材を使用した鋼橋が,LCC(ライフサイクルコスト)を低減可能なことから幅広く建設されている.しかし,一部の耐候性鋼橋梁では,局部的に層状剥離さびやうろこ状さびが発生する問題が生じている.耐候性鋼橋梁の腐食要因として,海からの飛来塩分,鋼表面の湿度や温度差による結露による濡れなどがあげられる.
 そこで,本研究は新潟県内の既設鋼橋梁内桁の複数個所に飛来塩分捕集器具,ワッペン式暴露試験片を設置し,気象庁の風速データ,飛来塩分と腐食の関係を検討し,腐食量の予測を行う.また,簡易的に濡れ時間を測定する方法の検討を行う.
 飛来塩分の観測とワッペン式暴露試験片の設置を行う対象橋梁は,新潟県新潟市岩室の矢川上に位置している.離岸距離は3kmで,この橋梁と海の間には200m程度の山があり,海塩はこの山を越えて飛来する.
 計測期間は,2008年12月から2010年12月までとし,対象橋梁から最も近い気象庁の観測データから,飛来塩分捕集期間1ヶ月ごとの風速を求め,捕集した桁下の飛来塩分量との関係を求めた.そこから,風速と飛来塩分は相関関係にあることが分かった.
 次に,1ヶ月ごとに計測した飛来塩分量のデータを1年間,2年間と平均したものと,1年間,2年間と暴露したワッペン式暴露試験片によるそれぞれの腐食減耗量との関係を求めた.そこから,飛来塩分と腐食減耗量は相関関係にあることが分かった.
 次に,風速の変動が板厚減少量に与える影響を検討した.30年間の風速観測データから,年平均風速が最低値である場合と,年平均風速が最高値である場合の板厚減少量の値の変動を求めた.このことから,風速の変動を考慮した100年後の板厚減少量の予測を行い,危険箇所の確認をすることができた.
 また,鋼材が腐食するためには水分が不可欠であるため,直流抵抗による簡易的に濡れ時間を測定する方法の検討を行った.さび層は水分を含んでいない状態では非導電性であり,大きな抵抗値を示す.しかし,このさび層が水分を含むことにより抵抗が低下することが予想できる.この抵抗の低下時を濡れ時間として評価できるか,検討を行った.
 実橋にACMセンサ,温湿度計,そしてテスターを設置し比較を行った結果,湿度とACMセンサの値が濡れを示している際に,抵抗値が低下することが確認できた.湿度・ACMセンサの変動に抵抗値の変動が概ね合致していたことから,直流抵抗により濡れ時間の把握が可能であると思われる.

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