宍戸香織
ハイブリッド桁の曲げとせん断の相関強度評価法の提案
指導教員:長井正嗣
ハイブリット桁は,フランジに高降伏点鋼材,ウェブに低降伏点鋼材を組み合わせた桁である.近年,プレートガーダー橋の支間の増大の要求と高強度鋼の開発により,経済性に優れているハイブリッド桁が注目されている.しかし,現行の道路橋示方書では,材料の降伏現象が橋梁システムの終局状態と定義されているため,ハイブリッド桁は経済的にメリットが得られない.そのため,我が国においては限界状態設計法の導入が不可欠であるが,今のところ設計法を確立するほどの基礎的なデータは少ない.特に,ハイブリッド桁の曲げとせん断の相関強度に関する研究は少なく,より多くのパラメータを組み合わせたハイブリッド桁で曲げとせん断の相関強度を検証する必要がある.
そこで,本研究では曲げとせん断の相関強度を明らかにすることを目的とする.まず,曲げとせん断を受ける種々のハイブリッド桁を96体設計し,複合非線形有限要素解析を行う.使用する鋼材は経済的にメリットが得られる組合せとしてフランジにSM570,ウェブにSM490Yを使用する.さらに,有限要素解析により得られたせん断耐荷力を分析し,既存のせん断耐荷力式の評価精度,曲げ・せん断の相関関係を検討する.そして,今回の解析結果に基づき,ハイブリッド桁へ適用可能な曲げ・せん断強度の照査方法を提示する.なお,既存のせん断耐荷力式はBasler式,三上式,前田式の3つを用い,相関関係については2乗相関則および4乗相関則を用いて考察する.
本研究から得られた知見を以下にまとめる.
(1) せん断が卓越するモデルについて3つのせん断耐力式の精度を検討したところ,Basler式は危険側の予想,三上式はすべてのモデルにおいて安全側の予想となり,前田式はアスペクト比の増大に伴って評価精度が低くなる傾向が見られた.
(2) テストパネルに作用する等曲げモーメントと終局曲げ強度の比および最大せん断荷重と3つのせん断耐力式の比の関係から,作用曲げとせん断荷重が大きい領域では曲げ・せん断の相関が見られ,4乗相関則に概ね従うことを確認した.
(3) 終局荷重時の変形コンター図および応力分布図により,せん断が卓越するモデルについてはテストパネルに斜張力場が形成され,終局状態に至ったこと,曲げが卓越したモデルについては,テストパネルの上端部に曲げ座屈が発生し,終局状態に至ったことが分かった.
(4) 今回の解析結果に基づいて,合成桁の架設系や非合成桁の終局限界状態における相関強度の照査方法を提案した.
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