向笠正洋
落石防護工に用いる緩衝金具の開発と性能評価に関する研究
岩崎英治
わが国では,地震や気候および地形などの条件から多くの落石災害が発生しているため,数多くの落石対策工が施されている.なかでも落石防護網は軽量で設置・補修が容易という特徴があるが,その施工は実斜面上で行われるため安全性の問題などから更なる施工性の向上が求められている.そこで,本研究では落石防護網に用いる緩衝金具を対象に研究を行った.
緩衝金具とは,落石防護網のワイヤロープ上に設置し,ロープに一定以上の張力が発生すると,金具内でロープが滑動し,その際の摩擦力で落石エネルギーを吸収する機能を持った部品である.
本研究では2種の緩衝金具を作成し,これらについて性能評価実験を行っている.一方(金具A)は2本のボルトで金具を締付けるタイプであり,他方(金具B)は4本のボルトで締付けるタイプである.また,各緩衝金具の諸性能を把握した後に,動的応答解析によるシミュレーションを行い,重錘の落下条件が落石防護網の挙動に対して与える影響を検討している.
始めに,ロープに金具を設置した試験体の静的引張試験を行った.試験体には,それぞれの緩衝金具について締め付け条件を変えたものを5体ずつ作成し,締め付け条件と発生する張力との関係性を解明した.結果として,金具の締め付け強さにほぼ比例して発生する張力が増加していることが分かった.また,2種の金具の試験結果を比較すると,金具Bの方が,バラツキが少なく誤差の少ない作成が可能であるため,以降は金具Bのみを研究対象とした.次に,ロープに緩衝金具を設置した試験体への重錘落下試験を行った.同一の条件で作成した試験体へ高さを変えながら重錘を落下させ,各緩衝金具のエネルギー吸収性能と部材の挙動を解明した.結果として,どの落下高さでもロープに発生する張力は金具によってほぼ一定であり,その値を今後の解析に用いる設計張力として決定した.次に,実際の規模で組み立てた落石防護網への重錘落下試験を行った.エネルギー吸収性能と各部材の挙動の解明を行った.試験の結果,落石エネルギーは端緩衝金具によって大部分が吸収され,クロス緩衝金具はロープ同士の交点を結束し,エネルギーを隣接するロープに分散させる効果を示した.
各試験によって緩衝金具の諸性能を解明した後に,動的応答解析を用いて重錘落下試験の再現を行った.それぞれの試験を再現するようなモデルを作成し,解析結果を試験結果と比較し,解析結果の再現性を確認した.次に,様々な重錘の落下条件を与えたモデルの解析を行った.結果として,重錘の落下条件と落石防護網の挙動や各緩衝金具の滑り量の関係性を明らかにした.
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