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幾何学的要因による中折れ式シールド機の制御方法

中島千博

杉本光隆

近年，都市の地下空間では，構造物の輻輳化や施工可能空間の狭隘化により，シールドトンネルの大深度化や急曲線化が進んでいる．そこで，中折れシールド掘進機が，大きな曲率をもつトンネル工事に使用されるようになった．中折れシールド機は，曲線の線形確保のため，シールド機本体を前胴部と後胴部に分割して，中折れ角をつけることによって両者を屈曲させ，曲線トンネルの内側を余分に掘り(余掘りして)，ジャッキ力により土中を掘進する．従来，これらの操作は，オペレータの経験を基にしたエキスパートシステムやAIを利用した自動掘進システムで行われることが多かった．しかし，これらのシステムはいくつかの経験的な関係を基にし，理論的な背景を持たない．このため，複雑な地質構造を有する地盤でシールド機の挙動を予測・制御することは困難である．さらに，今後は，未知の条件となる大深度での施工や，浅深度での極めて正確な近接施工が要求される場合が増えると予想され，これらに対応するためには，経験のみに基いた従来のシールド機制御手法から，力の釣合いを考慮に入れた理論的な制御手法への移行が必要であると考えられる．
ところで，シールド機の制御項目は多岐にわたり，共線性を有する項目もある．そこで本研究では，シールド機の理論的な制御手法を確立することを目的として，トンネル掘削境界面とシールド機の幾何学的条件を用いて，シールド機の制御に関わる操作入力値の内，シールド機挙動にもっとも大きな影響を与える余掘り量(コピーカッターの適用範囲とその長さで表す)および中折れ角を，解析幾何学により求める手法を開発した．また，この手法に基づいて開発した数値解析プログラムを用いて様々なトンネル計画線形について解析を行った．
本研究により以下の結果を得た．
①中折れ角θqは曲線区間におけるシールド機の操作基準，シールド機の緒元，トンネル線形に依存する．
②コピーカッター長の最大値は，トンネル線形の法線方向に存在する．また，その逆方向で，コピーカッター長は最小値をとる．
③主法線方向を中心として約180°の範囲でコピーカッターによる余掘りが必要である．
④シールド機をシフトしても，中折れ角と余掘り量への影響はほとんどないので，シールド機シフトにより，シールド機とセグメントとの競りを防止する方法は有用と考えられる．

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