氏  名:田崎健祐


論文題目:砂質土のせん断波速度と液状化強度の関連について


指導教員:豊田浩史

 
低コストかつ非破壊で地盤内のせん断波速度分布を容易に求めることができる表面波探査試験が近年注目を集めている.この試験から得られるせん断波速度はN値や土の物性値と関係性が高いパラメータであるため,その関係を活用した健全性評価システムの開発が進められている.特に,液状化被害が発生した地域を中心に表面波探査試験を実施,液状化被害とせん断弾性波速度構造図から予測される液状化判定結果と比較して,液状化危険度評価手法の適用性を検討する研究が進められており,液状化予測手法の適用性に関する検討は,大規模な地震に備えて急務であるといえる.
 しかし,これらの研究のほとんどは粒径分布の狭い砂地盤を対象としたものであり,1987年に発生した千葉県東方沖地震で液状化した細粒分を含んだ土,1995年に発生した兵庫県南部地震で液状化したまさ土のような礫を含んだ土を対象としたものはほとんどない.そこで本研究では,せん断弾性波速度Vsと液状化強度RLの関係を明らかにし,最終的には純粋な砂地盤だけではなく,粒径分布の広い,細粒分や礫分を含んだ土に対しても適用できる液状化強度予測手法の構築を目指す.
 ここで,砂地盤において原位置の液状化強度を求めるためには不攪乱試料を凍結サンプリングする必要があり,その調査費用が高いことが問題となっている.本研究では,液状化を起こす固結していない地盤を対象として乱した試料を採取し,せん断波速度と液状化強度の関係を求め,原位置の液状化強度を推定可能か,実験的検討を行った.なお,ここでは地盤が受けるあらゆる履歴のうち,過圧密履歴に着目した検討を行った.本研究で得られた結論を以下に示す.

1. せん断波速度と間隙比の関係より,同じ間隙比でもOCRが上がることでせん断波速度も増加することが分かった.
2. 液状化強度と間隙比の関係より,同じ間隙比でもOCRが上がることで液状化強度も増加することが分かった.
3. 過圧密履歴を受けた,ゆるい豊浦砂のせん断波速度から擬似的間隙比を介して,液状化強度を推定できる可能性を示した.
4. 他の土質に対して,また過圧密履歴だけでなく地震履歴などの履歴に対しても同様の実験を行い,この手法が適用できるか検討する必要がある.

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