氏  名:佐藤勇太

論文題目:アクティブ制御による土の非排気せん断試験方法の開発

指導教員:豊田浩史

 不飽和土の非排気試験試験は,水銀を用いることにより1960年代にBishopにより試みられている.計測機器の精度が上がった最近の結果が待たれるところであるが,水銀の取扱いの制限により,この種の試験は全く行われなくなってしまった.
 水銀のように空気が溶け込まない材料を使う以外に,物理的には真の意味で非排気試験は不可能である.メンブレンの空気の透過性を考えると厳密には非排気状態とはなっていない.それゆえに,不飽和土の排気非排水条件と排気排水条件での三軸圧縮試験は基準化されているものの,非排気非排水条件は基準化されていないのが現状である.
 本研究では非排気状態と等価の状態を作り出すアクティブ制御を用いて水銀を用いなくても精度よく,そして安易に非排気試験が行われるか検討するものである.本研究でのアクティブ制御とは,供試体の体積変化を,二重セルを用いた差圧計で測定し,理想気体の状態方程式を用いて空気圧の変化を算出し,この空気圧を供試体に作用させる方法である.このアクティブ制御により,非排気非排水条件と等価の状態を作り出すことができると考えられる.
 アクティブ制御を用いた単調載荷試験および繰返しせん断試験を行い,アクティブ制御の有無による試験結果の違いについて検討した.以下に本試験での結論を示す.
1.短時間でのせん断試験は,間隙空気の漏れ量が小さいため,非排気状態に近くなる.
2.長時間試験において間隙空気がメンブレンを透過し内セル水へ浸透することによる間隙空気圧uaの減少が起きる.
3.アクティブ制御のケースは,せん断速度に係わらず同等の結果となり,短時間でのせん断試験とほぼ同じ結果となる.
4.間隙空気の漏れにより,間隙空気圧uaが低下してPnetが高くなり,供試体強度が上がり,体積ひずみも大きく出る.
5.間隙空気圧uaと間隙水圧uwはアクティブ制御の影響を受けて変化しているが,サクションの変化は小さい.これは,uwはuaの影響を受けて,従属的に変化するからである.
6.高いAEV値のセラミックディスクを用いる場合は,間隙水圧伝達の遅延の関係上,低速度せん断での試験を行わなければならない.
 以上の結果より,アクティブ制御による非排気試験は,実際の非排気状態と等価の状態を作り出しており,非排気試験を行うには効果的な手法であることが分かった.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。