桜井俊裕

推進管の継手曲げ実大実験による推進力伝達材が推進管に与える影響の検討

指導教員 杉本光隆

シールド工法では,シールドは組立てた先端のセグメントから推進力を得るのに対し,推進工法では,発進立坑から掘進機に推進力を与える点が異なる.このため,推進工法では,全ての推進管が掘進機とともに前進することになるので,掘進メカニズムを解明するためには,掘進機と全ての推進管からなる管路の全体系を考慮することが必要となる.さらに,本研究で対象とする推進工法にあっては,公共事業コスト縮減のために,立坑の数を減らし,1回の推進長を延ばすための長距離推進技術や,用地費が必要な民地を避け,公共道路下に管路を埋設するための急曲線推進技術が求められている.
上記を踏まえて,管路の全体系を対象として,地盤と推進管の相互作用を考慮に入れた推進メカニズムを理論的に表現できる管路解析モデルを開発してきた.しかし,上記管路解析モデルのうち,新たに開発した曲げ剛性を有する推進管継手モデルは,実測データを用いて検証されていない.そこで,本研究では,推進管の継手曲げ実大実験を行うことにより,直線・曲線推進時に推進力伝達材が推進管に与える影響を解明することを目的とする.
本実験では,実大の推進管2本を推進力伝達材を介して接合し,軸方向に載荷を行うことにより,曲線部・直線部において,推進力が推進力伝達材を介して伝達されるときの,推進管に発生するひずみ・応力・断面力,推進管の変形,および,隣接する推進管の相対的な変位を把握する.推進管は,内径800mm,有効長2430mm,管厚80mmの形状のものを使用した.推進力伝達材は,発泡倍率2倍の発泡スチロール製で,推進管の接合部には厚さ10mmの推進力伝達材を4枚重ねて,推進管の両端部には厚さ10mmの推進力伝達材1枚を,それぞれ上下90°ずつの範囲に設置した.推進管に対する影響を曲線部と直線部で比較するため,実験ケースは直線線形と曲げ角度3.61°と設定した.
実験結果から得られた結論を列記する.
1) 曲線部では,推進力の増加とともに,継手間隔は曲線内側・外側ともに減少し,曲げ角度も減少する.
2) 曲線部において推進管に発生する軸方向ひずみは,接合部近傍では,曲線内側の推進力伝達材設置範囲で大きい.また,接合部から離れるにしたがって,推進力伝達材の設置範囲から未設置範囲へ分散していくが,曲線外側ではほとんど発生しない.
3) 鋼製の埋込カラーの内側コンクリートでは,埋込カラーの剛性のために,軸方向ひずみは抑制される.
4) 直線部において推進管に発生する軸方向ひずみは,ほぼ左右対称で,曲線部よりひずみの集中は緩和される.

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