安田 剛章

波と流れによる阿賀野川河口砂州の形状変化について

細山田 得三

日本海に面した新潟県の海岸は,冬季の風浪,春季の融雪出水,梅雨期の大量出水,夏季・秋季の静穏期の季節的な変動が明瞭であり,河口砂州のような特異な地形変化もこれらのサイクルに依存している.さらに10年に一度の大規模な出水や地震などのイベントによる短期的な変動が重なっている.日本海に注ぐ阿賀野川の河口地形も同様の季節変動の影響を受け,砂州の発達とフラッシュ(消失)を繰り返している.
一般的な河口砂州の問題点として,まず砂州の形成に伴う河口閉塞により洪水時に砂州の上流部で水位が上昇し,水害が発生しやすくなる.さらに,砂州に土砂が溜まることにより,河口部付近の飛砂,船舶の安全な航行への支障などの影響がある.逆に砂州が取り除かれると塩水遡上が促進され,取水施設や農産物への被害が懸念され,また,河口部の生態系の撹乱が生じる.近年,日本海側の河川では融雪出水の減少によると推測される河口砂州の上流側への移動と発達が観測されており,開口幅も狭くなっている.河口を安全に管理上で,流れや波の外力による河口砂州の動態の把握が重要となっている.河口部は河川流と海岸における波動という2つの外力が同時に作用しており,その力学的な特性を把握することが困難である.
本研究では,主に数値モデルを用いて流れと波による河口地形変化について検討を行った.波の計算には波の非線形性と分散性を考慮した修正ブシネスク方程式を用い,海浜流の流速を修正ブシネスク方程式より得られる線流量を水深で除すことによって求められる断面平均流速とし,底質の移動に影響を与えている底面流速を数値モデルにおいて代表的な抵抗則である2乗則(バルク公式)とマニング公式の両式から得られる底面流速を導く式から求め,底面流速に依存した地形変化を求めるという,各現象を同時に計算する方法である.計算の条件には,波の条件として実海象波浪である多方向不規則波を用い,より自然の状態に近い現象を計算に取り入れて計算を行う.このとき用いた地形条件は,阿賀野川河口の周辺海域を深浅測量した結果を元に作られた等深線図を,コンピュータで取り扱うためにデジタルデータに変換し使用した.この数値モデルを用いて,阿賀野川の河口付近などを再現し砂州の動態を把握した.結果として,河川の流量,河口域の河川に入り込む流れなどが河口の砂州形成に重要であると確認できた.

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