村川 はるみ

離岸流と海岸変形の相互作用に関する研究

細山田 得三

離岸流は,海岸における砕波などの波の非線形現象によって生じる強い沖向きの流れである.離岸流に起因する海水浴中の水難事故は,毎年多数発生しており,新潟県内では,2000 年から2009 年に起こった海浜事故81件のうち,38件が離岸流によるものであるとされている.海岸近くでは,波の屈折によって岸に平行な沿岸流が生じているが,地形に応じてこの流れが沖方向に向きを変え,非常に速い流れとなる.離岸流は,汀線が円弧状に彎曲している場所(カスプ地形)や海崖などの地形条件や,突堤,離岸堤といった人工構造物の配置条件に起因して発生する.しかし,そのような外部的な条件が一様であっても,規則的なセル構造を持った離岸流が発生することがある.離岸流の明確な発生機構については,十分理解されていないのが現状である.これまで,海底地形変動を考慮しない室内での実験及び数値解析,現地での観測が行われているが,海浜流が地形に及ぼす影響は十分に考慮されていない.また,線形安定解析をもとにした理論的な研究が行われ,波や地形に依存した離岸流のセル構造の特性について知見を得ているが,理論を構築するに当たって様々な仮定が含まれ,実態との比較検討が難しい.
本研究は,離岸流と海岸変形の相互作用について検討を行うことを目的とし,数値計算モデルを構築し,離岸流と海岸変形の相互作用について計算を行った.計算には仮想地形として,一様勾配,カスプ地形を用い,実地形として離岸流が確認されている新潟県の太夫浜を用いた.波浪条件は,実際に事故が起こったとされる平常時の波浪条件を基準とした.これらの条件を基に,離岸流と海岸変形の相互作用について検討した.
その結果,海浜流と地形変化の相互作用を計算を行うことで,離岸流による土砂の輸送,および海岸変形について確認できた.さらに,地形変化に応じた流速の変化についても確認できた.地形変化の計算を行わない場合には,いずれの計算ケースにおいても流速の時間的な変化は生じなかったが,地形変化計算を行った結果,離岸流の流速は時間的に変化することがわかった.一様勾配地形においては,地形変化を考慮しない場合は,離岸流の形成が見られなかったが,地形変動と波,流れの相互作用を考慮すれば,セル状の離岸流が生じ,その流速は0.5m/s程度に達した.

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