吉田 敬弘
急速載荷試験を用いた杭の鉛直支持力算定手法に関する研究
大塚 悟
杭基礎の設計鉛直支持力は地盤定数と杭体の諸元に基づき算定される．その設計値の妥当性は杭の鉛直載荷試験でしか確かめることは出来ないが，大きな支持力が必要とされる重要構造物を除いては，工期，工費の制約面から省略される場合が多い．
そのため，短時間で簡便に支持力を算定できる試験装置の開発が望まれており，近年では，急速載荷試験がいくつか開発されている．
急速載荷試験の中でも，杭頭に載せた反カマスを推進剤の燃焼ガス圧によって打ち上げ，反カマスの慣性反力を杭頭に載荷するスタナミック試験がある．これらの方法は，試験時間が非常に短時間であるという長所を有するが，比較的大型な杭を対象としているため試験装置が大型であり，狭隘な作業空間では試験を実施できない．また，燃焼圧力による動力源，重量物などの反力を取り扱うために，安全上の問題点や荷重載荷時間によっては杭体の材質が制限される場合があるといった短所がある．
そこで現在，急速載荷試験装置の動力源に圧縮空気を用いた安全，軽量小型で機動性に優れた試験装置を開発している．
本研究では，空圧式急速載荷試験装置の開発の一環として，急速載荷試験における杭の鉛直支持力特性の把握を目的とし，急速載荷試験の解釈法の検討を行う．
このような目的のもとに，本研究では模型試験および数値解析を実施する．まず定性的な傾向を把握するために，模型実験(静的載荷，急速載荷)をそれぞれ行った．試験方式は重錘を落下させるFM(Falling Mass)試験方式である．また，模型実験を3次元弾塑性有限要素法によって解析し，模型実験結果と解析結果を比較することで解析モデルの妥当性を検討した．以下に得られた結論を示す．
1)急速載荷試験を模擬した模型実験において，荷重，変位の時刻歴および杭体に生じる波動現象を検討した．その結果，本模型実験は急速載荷試験の定義の範鳴に含まれており，原位置FM(Falling Mass)試験を適切にモデル化できていることを確認した．
2)土−水連成を行ったFEM解析を用いて，本模型実験を荷重〜変位関係をシミュレートしたところ，高い精度での再現が出来た．これにより，杭基礎の変形予測に土−水連成FEMが有効であることが確認された．
3)急速載荷試験を用いて地盤支持力を推定することで，工期の短縮を図りつつ，安全な構造物の建設が出来る．
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