ken10207

野島　崇

地震時の過剰間隙水圧を考慮した盛土斜面の残留変位量算定手法に関する研究

大塚　悟

2004年の中越地震，2007年の能登半島地震をはじめとして，過去の地震では盛土被害が多数発生している．このような背景を受け，被害が発生した要因や被害発生メカニズムを検証することを目的とし，盛土材の力学特性に着目した三軸試験，人工模型地盤を用いた振動台実験を実施し，その崩壊メカニズムを調査してきた．既往の研究での模型実験は，斜面崩壊を引き起こす要因として盛土内の浸透水に着目し，地盤内の水位の違いによる盛土崩壊メカニズムの相違について解明した．また，これらの地震時に対する盛土の安定性照査は円弧すべり法による極限釣合い法を用いて評価が行われている．しかし，現在では安定照査の対象としてレベルⅡ地震動などの設計地震振幅の増大化が問題とされており，すべての盛土構造物に対して安全率を1以上に設定することはコスト高になってしまう．このような大規模地震に対しては損傷をある程度許容することが合理的とされ，盛土構造物の耐震評価に変形量照査の導入が必要とされてきている．
このような背景を踏まえ，本研究では，残留変位量の簡易算定手法として最も用いられているニューマーク法に着目し，液状化強度曲線を用いた過剰間隙水圧を算定することのできる方法を組み込むことにより，地震時に発生する過剰間隙水圧を考慮できる修正ニューマーク法の提案を目的としている．また，構築された修正ニューマーク法を用いて，振動台模型実験および実被害事例に対して変形計算を行い以下の結論を得た．
1）模型実験での盛土崩壊時には盛土内の過剰間隙水圧の発生が先行し，それに伴い変位が進行していることから，盛土内の有効応力の低下が崩壊に至る要因である．
2）簡易に地震時の過剰間隙水圧の算定手法として，修正Fellenius法を用いた解析を行い，三軸圧縮試験より得られる液状化強度曲線を組み合わせた手法を提案した．
3）規則波のみでなく不規則波（地震波）の繰返しに対応するため加速度の最大値および継続時間を考慮でき，単調増加関数の形式に置き換えることのできる繰返しパワーを指標に用いた．
4）提案した手法を用いて模型実験および実被害事例として新潟県中越地震で被災した高町の宅地盛土を対象として変形解析を行い，地震動の大きさと地下水位の変化による残留変形量を再現できることを確認した．

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