安田裕也

アスファルトバインダ疑似引張試験によるアスファルト混合物の流動抵抗性評価に関する研究

丸山暉彦

道路や空港における舗装は紫外線,降雨,温度変化等の厳しい条件下で供用されている.このような環境において,アスファルト舗装の耐久性に影響を与えるのはアスファルトバインダの品質であるが,舗装の耐久性がアスファルトバインダの品質と,どのような関係にあるのか明確になっていない.よって舗装の耐久性に関連した評価方法が必要である.
改質アスファルトの一種であるポーラスアスファルト舗装は,雨水が路面に滞留する事を防いだり,走行により生じる騒音を軽減させたりする効果があり広く用いられている.このように改質アスファルトの使用は一般的となっているが,その品質は,技術者の経験によって確認されている現状である.
改質アスファルトの付着力を測定する試験として,タフネス・テナシティ試験がある.この試験はアスファルト中に埋め込んだ鋼製半球を一定速度で引き抜く時のエネルギーを測定する試験であるが,これにはいくつかの欠点がある.まず,試験温度が常温に限られている点である.また,試料の断面積を一様にできない事や,エネルギーを求める際の接戦の引き方によって,エネルギー値が変動する事などが影響し,データの再現性が悪い.その為,本研究では疑似引張試験を改質アスファルトの物理的性質の評価に適用する事を提案している.
舗装試験法便覧には,伸度と耐久性が関連づけられている記述があるが,伸度と耐久性を関係づけるだけでは,軟らかいアスファルトの方が望ましい事となり不十分である.疑似引張試験は,荷重を測定しながら引張る事で切断に要するエネルギー等の物理的性質が求められる.また,循環する水の温度を変える事で,低温から高温まで幅広い領域での適用が可能である.さらに,エネルギー算出に個人差が生じない利点もあり,タフネス・テナシティ試験に代わる再現性の良い試験であるといえる.
以上を踏まえ,本研究ではアスファルトバインダを評価する為の疑似引張試験を5℃,15℃,25℃,35℃でそれぞれ行い,混合物の流動抵抗性を評価する為のAPA試験を60℃で行い,両試験の相関を取った.その結果,疑似引張試験から得られる「ピークまでのエネルギー」と,APA試験から得られる「最大わだち掘れ量」に相関がある事が分かった.この関係を用いて,疑似引張試験の実施温度とピークまでのエネルギーを入力する事で,流動抵抗性が評価できる形にまとめた.

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