椎谷 啓
画像処理によるアスファルト混合物の骨材流動解析
丸山暉彦
アスファルト舗装はコンクリート舗装に比べて敷均し後の養生時間が短いため,すぐに供用開始ができるという長所がある.しかし,アスファルトはわだち掘れなどの破損が生じやすい.わだち掘れは,安全な交通を妨げるだけでなく,維持・管理・修繕に膨大な費用を要してしまう.そのため,わだち掘れ対策に関する研究が行われ,改質アスファルトや新たな配合設計などが開発されてきた.
実験室レベルでわだち掘れを再現し,流動特性の検討およびアスファルト舗装の供用性の予測などを行う代表的な試験として,ホイールトラッキング(WT)試験とAsphalt Pavement Analyzer(APA)試験があげられる.WT試験は,わが国で標準的に行われている試験で,動的安定度(DS)や変形率(RD)といった評価指標をもとに,流動特性の検討を行っている.一方,APA試験は,米国における高速道路規格に関する基準設定機関であるAASHTOにおいて,わだち掘れによる永久変形を測定する試験機として使用されている.APA試験用供試体は,全重量が約5kgとWT試験用供試体の半分であるため,作製が容易である.また,APA試験機はWT試験機の半分程度の大きさで,一度に複数の供試体に対して試験可能であるといった利点がある.しかし,APA試験は,わが国での実績が少ないことから,評価指標が存在しておらず,導入は困難とされている.
本研究では,WT試験のDSに相当する評価指標をAPA試験に設定することを目的とし,APA試験のDS値の求め方を提案した.次に,それぞれの試験において,供試体内部の骨材の流動特性を画像処理により把握した.最後に,骨材の流動特性を考慮する前と考慮した後で両試験の相関を取り,回帰分析を行い推定精度の違いについて検討した.
以下に,本研究の検討により得られた知見を示す.
1.APA試験結果のサイクル数とわだち掘れ量の関係で表されるグラフは,上下の揺れが大きいため,必要な箇所のわだち掘れデータを平滑化した.この作業を行って求めたAPA試験のDSは,ばらつきが小さくなることを確認した.
2.APA試験における供試体内部の骨材の移動特性は,混合物による違いはあまり見られず,荷重載荷位置近傍の骨材が下方および側方へ小さく流動することが確認できた.この移動特性に近いWT試験の経過時間は,30分程度が妥当であることを確認した
3.骨材の移動特性を考慮し,両試験の相関を取るとビーム型供試体においてはデータのばらつきは小さくなり,推定の精度は高くなることが確認できた.
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