幸田 和也

市町村合併による被集約都市の中心市街地の実態と課題に関する研究

中出 文平・樋口 秀・松川 寿也

平成の大合併により活性化が必要な中心市街地を有する都市同士の合併が全国で発生した。中心市街地活性化法(中活法)では、原則として中心市街地は1市町村に1区域に限定している。そのため、中心都市と合併した被集約都市では新中活法による基本計画の策定及び事業の実施が困難であると考えられ、被集約都市中心市街地の活性化策が問題となっている。そのため本研究では、現在までの中心市街地活性化事業の実施状況、中心市街地の必要性及び行政と商店街等関係機関の連携を明らかにすることから、被集約都市の中心市街地の実態と課題を考察することを目的とする。
研究対象とする被集約都市は、平成の大合併により複数の旧基本計画策定地区を有する自治体のうち、合併都市の人口規模比率により全国の37自治体、45地区とした。
まず、アンケートにより旧基本計画事業の実施状況、現在の実施策及び中心市街地の現状を調査した結果、被集約都市の中心市街地の衰退状況、活性化の必要性、新中活法が適用しにくいため失効した旧基本計画を拠りどころに活性化策を模索している自治体が多い点が明らかとなった。また、事業実施にあたり国からの支援はほとんどない状態であり、旧基本計画の代替として都市再生整備計画を策定し、まちづくり交付金を担保として事業を実施している自治体も存在することが明らかとなった。
詳細研究対象都市として、DID・用途地域の有無、中心市街地間距離等を条件として、静岡県旧浜北市、新潟県旧豊栄市、旧巻町、旧栃尾市、島根県旧平田市の5都市を選定した。ヒアリング調査と現地調査により、中心市街地の必要性、事業の実施状況、事業効果及び実施策、各主体の関係性を中心として、各都市の中心市街地の実態を明らかにした。そして、旧基本計画事業では道路整備、施設整備等のハード事業が多く実施されたが、活性化につながる中心市街地内部の整備が実施できていないこと、基本的に本庁が全市域を調整しているため、合併により決定権を失った被集約都市が独自に動くことはほぼ不可能であること、行政と民間組織の連携が図れていない都市が多いことが明らかとなった。これより、効果的な中心市街地活性化を図るためには関係者のコンセンサスの形成及び本庁を含めた行政との更なる連携が必要不可欠である。そのため、行政と民間組織間はもちろんのこと、行政内関係する部署間、担当者間が協議会等で連携を図りながら事業展開する手法が望ましいと考える。

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