伊藤 浩明
都市計画区域を新規に指定もしくは拡大した自治体の経緯に関する研究

中出 文平・樋口 秀・松川 寿也

近年の広範囲に及ぶ都市的土地利用の拡大や平成の大合併による再編等、都市的土地利用制御のために必要となる都市計画区域に顕著な変化がみられる。すでに都市計画区域の新設については平成11年頃までの研究蓄積はあるが、上記の背景を反映するのはその後の動向である。
そこで、本研究では平成9年以降に都市計画区域を新設もしくは拡大した自治体について都市計画区域の指定を必要とした理由を把握し、全国的な傾向を明らかにする。また、都市計画区域指定までの経緯や都市計画区域指定範囲の根拠、住民説明会での意見及び自治体の対応を明らかにすることで、今後の都市計画区域指定の課題を明らかにすることを目的とする。
本研究では、まず都道府県アンケート調査、市町村アンケート調査から全国的な都市計画区域指定の傾向を把握した。その結果、都市計画区域の拡大は各年でコンスタントに行われているが、新設は年々減少傾向にあること、都市計画区域の新設が減少している一方で、市町村合併後の都市計画区域再編が増加していること、従来は都市施設の整備を目的として都市計画区域が指定されていたが、近年では、土地利用規制を目的として都市計画区域を指定している自治体が増加しており、それに関連して農地や自然環境の保全にも重きが置かれていることが明らかになった。また、都市計画区域決定権者は都道府県であるが、都市計画区域指定の要望を挙げているのは市町村であることも明らかになった。
次に、土地利用規制を目的とした自治体に着目し、ヒアリング調査を行い、都市計画区域指定の経緯、都市計画区域指定範囲の根拠、住民説明会での意見及び自治体の対応を把握した。その結果、都市計画区域は、郊外や丘陵部、山間部での開発、周辺市町村からの開発圧力等に対応するために指定されていること、都市計画区域の指定範囲には国有林を除く場合がほとんどであること、字界を基準としている自治体が多いことが明らかになった。また、住民は、土地利用規制を目的としている自治体の意向とは違い、都市計画税や都市施設の整備に関心が強いことも明らかになった。
以上のことから、総括として、都市計画区域を国有林等他法令で開発可能性が極めて少ない地域を境界とするもしくは行政域全域に指定するべきであること、都市計画域決定権者である都道府県が市町村の要望を聞き入れるだけでなく広域的な観点を持って都市計画区域指定を働きかけるべきであることを提言した。

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