出張 龍馬

フレックスタイム制度導入による渋滞緩和効果

佐野可寸志 土屋 哲

 交通需要マネージメントの一つとしてフレックスタイム制度がある。フレックスタイム制度とは、会社にいなければならない時間”コアタイム”を守れば、社員自身が自由に始業時刻を決定できる制度である。この制度を利用することで、朝の忙しい時にゆとりが持てる、早く仕事を終わらせることができるといった、個人にとって最も効用の高い通勤時刻を選択することができる。
朝夕に集中する交通トリップは通勤者がほとんどである。そのため、この制度が普及することにより、朝夕に集中する交通量が分散し、交通混雑が緩和されることが期待できる。さらに、制度自体に特に費用や工事の必要がないというのも大きな利点である。
 本研究の目的は、フレックスタイム制度普及による渋滞緩和の効果を検証することである。
 研究の手順として、まずイギリス・エジンバラ大学で開発された交通シミュレータ「Paramics」で長岡市の交通ネットワークを作成する。次に、平成17年度道路交通センサスから、作成したネットワークに合うように調整し長岡市のOD表を作成する。このOD表は朝6時から10時まで10分毎に作成することで、各時間帯の交通特性を持たせている。また、作成したOD表は平成17年度の情報を使っているため、現在の長岡市の交通状態とは離れている。そのため、観測交通量を用いてOD表の修正を行う。
 フレックスタイム普及後のシミュレーションに用いるOD表は、平成22年度に長岡市で行われたノーマイマーカーデーに合わせて実施したアンケートからフレックスタイム制度を普及した時に希望する出発時刻の割合を求めて作成する。
この2つのOD表を入力としてシミュレーションを行ったところ、本研究では、フレックスタイム制度を普及することで渋滞が緩和できるかどうかについて考えた。都市ネットワークを構築し、道路交通センサス、アンケート調査によりフレックスタイム制度普及前、後でのOD表を作成、これらを使ってシミュレーションを行い、その効果を分析したところ、フレックスタイム制度を普及することで約8.95%の遅れ時間を解消することができるということがわかった。また、フレックスタイム制度の普及率が30%になった時が最も効果割合が大きく、それ以上普及率が上がると総所要時間、総遅れ時間はそれほど変わらないが、時間帯別の総所要時間、遅れ時間は変化し、交通量の分散が行われることもわかった。

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