渡邉 大資

長岡都市圏における通勤トリップの自転車利用促進の可能性

佐野可寸志,土屋哲

我が国では特に地方部において自動車交通への依存度が高く,「モータリゼーション」が進展しており,伴う交通機関を巡る諸問題も年を追うごとに深刻さを増している.そこで,都市交通において自動車依存への抑制手段の一つとして現在注目されるものが自転車交通である.環境負荷軽減や国民の健康増進といった点で極めて優れた特性を備えた自転車交通は,今後の都市交通の中でさらなる利用の促進が求められており,特に自動車依存度の高い地方都市において,その抑制の一手段として有望視されている.
そこで,本研究では新潟県長岡市を対象として,「ノーマイカーデー」というイベントに合わせて通勤状況アンケート調査を実施することで,地方都市における自転車交通の現状を把握すると同時に,ノーマイカーデーイベント期間中の通勤手段転換行動及び,将来的な自転車への通勤手段転換・利用促進の可能性とその為に今後整備すべき施策の方向性についての検討を行う.
通勤状況アンケート調査結果より判明したことは,現状の通勤行動における自動車選択率が9割に達するなどモータリゼーションが進行しているという実態が判明した.これ対して長岡市では自動車依存進行の抑制を企図して,平成13年度から「市内一斉ノーマイカーデー」を年1回設定している.アンケート結果から,ノーマイカーデー期間中の転換先手段としては自転車が最多,次いで相乗りが選択されており,さらに転換体験者に一定の自動車利用抑制意向発生が認められた.ただし,転換手段によっては通勤者の満足度に差が発生し,相乗りやバスなど行動制約の多い手段に転換した人よりも,徒歩や自転車へ転換した人の方が今後の継続意欲も高くなっていた.これにより,ノーマイカーデーの有効性が証明されると共に,徒歩や自転車の転換満足度が高いため,今後はそれら手段への転換を推奨することが望ましいと考えられる.また,将来自転車転換意向について,アンケートの回答結果では12km以内の自動車通勤者の内,ノーマイカーデー期間中転換経験者の7割以上,それ以外でも半数以上の通勤者が条件さえ整えば自転車通勤が可能であると回答した.さらに,非集計行動モデルを構築して分析したところ,ノーマイカーデーへの転換行動の促進には通勤者の自動車利用抑制意向の高さや過去のノーマイカーデー参加経験が有効であると判明した.将来的な自転車転換に有効な施策面では,走行環境整備,高性能自転車購入補助が有効,さらにノーマイカーデー期間中自転車転換体験が施策以上に有効であることが明らかとなった.よって,市民の環境・自動車利用抑制意識を啓発すると共にノーマイカーイベントを浸透させ,施策面では自転車走行環境や自転車購入補助制度を整備することで,自動車による短距離通勤を自転車通勤へと転換を促すことが可能であると結論付けた.

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