廣澤禎子

高速道路整備評価のための事業所立地モデルの構築

佐野可寸志,土屋哲

本論文の目的は、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)及び北関東自動車道(北関東道)沿線に立地する事業所を対象に、工場や物流施設といった物の出入りのある事業所における事業所立地行動選択モデルを構築である。具体的には、対象地域に立地する事業所を対象にアンケート調査を行い、得られた意識データに対して因子分析や共分散構造分析を行い、実行動データに対して非集計行動モデルを用いた事業所立地行動選択モデルを構築する。
意識データを用いて因子分析を行った結果、事業所の立地行動を構成する因子は5つあり、それぞれ「交通施設への近接性」「企業集積」「自治体の支援制度」「適切な用地の取得」「事業所施設への近接性」であることが明らかとなった。また、得られた因子を用いて移転活動の因果関係について共分散構造分析を行った結果、CFI=0.831、RMSEA=0.08から、比較的当てはまりのよいモデルを得ることができた。「交通施設への近接性」以外で有意となる内生変数が無かったことから、事業所移転の有無には交通施設の整備が大きく影響することが明らかとなった。
事業所の移転立地行動モデルには非集計行動モデルを用いた。モデルの推定には、事業所を移転するか否かについてと、事業所の立地場所の選択を多幸ロジットモデルで表した。モデルの推定により得られたパラメータからは、インターチェンジへの距離についてはt値が有意とならなかった。
本研究においては、実行動データから交通施設に関する有意なパラメータを得る事が出来なかったものの、意識データにおいて交通施設の整備が事業所の移転立地行動に影響を与えるのは明らかであり、調査地域の選定がパラメータ値に影響を与えたと考える。立地行動モデルの構築においては、実行動データのデータセットを再考するほか、対象範囲の設定などに改良の余地があると考える。

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