池下 康平

ニッケル基サーメット粒子のキャラクタリゼーション

佐藤 和則

 本研究室では、その燃料極におけるメタン酸化反応機構を明らかにするために、昇温脱離法を用いて検討している。昇温脱離解析は作製サーメット粒子に吸着したガスの吸着状態と脱離量を測定することができる。この測定試料の表面状態や粒子形状により吸着状態および脱離ガス量は大きく影響を受けるため、作製サーメット試料の構成粒子存在形態の把握が不可欠である。そこで本研究では、含浸法により4つのサーメット粒子を作製した。また、燃料極サーメット粒子の一般的な作製方法である固相反応法により作製した試料を比較材料として、作製試料をX線回折(XRD)測定,熱重量(TG)測定,BET比表面積測定,透過型電子顕微鏡観察により存在形態を明らかにすることを目的とした。含浸法,固相反応法によるサーメット粒子Ni-YSZ,Ni-CeO2 ,Ni0.5Co0.5-YSZ,Ni0.5Co0.5-CeOの作製を行い、XRD測定による生成相の同定、TG測定、BET比表面積測定、BJH細孔分布測定によりサーメットの特性評価を行った。その結果以下の結論を得た。
 XRD測定により、500℃-1 h-20 vol%H2-He雰囲気の還元処理によってサーメット粒子のNiOおよびNi0.5Co0.5Oの酸化物が完全に還元されたのは含浸法だけであったことから、含浸法で作製した粒子は、粒径が小さく、反応場が多いことが確認できた。また、含浸法により作製した4つの試料はこの還元条件において、完全に還元されるものであることを示した。熱重量測定により、含浸法により作製した試料は、酸化開始温度が固相反応法により作製した試料に比べて低温側に移行したことから、含浸法で作製した試料は、粒径が小さく、反応場が多いことが確認できた。BET比表面積より、含浸法および固相反応法500℃-1 h焼成により作製したサーメット粒子は燃料ガス分子吸着実験を行うのに十分な比表面積であった。BJH細孔分布より、YSZサーメット粒子のほうがCeO2 サーメット粒子より細孔容量の低下が多く見られた。TEM観察結果およびEDSによる元素分析結果より、YSZ粒子は粒径約50 nmと揃っており、球形の形状をもつ粒子であることを確認した。また、CeO2粒子は粒径が平均的に見るとYSZより粒径が小さく、角状の形状をもつ粒子であることを確認した。混合状態は角状で粒径が不均一のCeO2より球状で粒径が揃っているYSZを使用した粒子のほうが混合状態が均一であることを示した。このことからCeO2 よりYSZのほうが粒子間接合が良いと確認できた。

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