朝倉 有人

長期連続観測に基づく合流式下水道越流水の汚濁負荷の解明

姫野 修司, 小松 俊哉

合流式下水道において,雨天時に汚水が未処理のまま公共用水域へと放流される合流式下水道越流水(CSO)による汚濁負荷が,環境保全の点から全国的に問題となっている。そこでCSOの放流実態や汚濁負荷量を正確に把握し,効果的な対策を講じる必要がある。
しかし,CSOの流出特性は気象条件などの影響を受けるため一降雨や単年での解析による対策の検討は難しい。そこで,本研究では長岡市の合流式下水道敷設区域(127ha)を対象としサンプリングシステムを用いて約20ヶ月間に渡り観測を行った。また,同システムを用いて2004年より連続観測が行われており,約7年間に渡り蓄積されたデータを基に経年変化を捉えることとした。
調査の結果,CSO発生回数は2006年度が最大で119回,2009年度が最小の55回であった。2004年度は他の年よりも観測期間が短いにも関わらず発生量が最大であった。よって,気象条件の影響を大きく受けるCSOは同一地点においても各年で発生回数・発生量が異なることがわかった。
CSO発生量に影響を及ぼす要因として,調査区域内における人口や降雨発生状況の変化が考えられたが,各観測年度における変化を見ることができなかった。そこで,長岡市で2003年度より実施されている管更生工法に着目した。管更生は,不明水を遮断する効果が期待できる。しかし,管更生の実施とCSO削減効果との明確な関係性は明らかとなっていない。また,管更生の実施は長岡市に限らず全国の自治体で行われている。長岡市における長期観測結果と,全国の管更生工事実施都市の下水処理場における経時変化から,管更生工事のCSO対策としての効果を明らかとすることで,汎用的技術であることを示すこととした。
不明水は,主に降雨時に地下へと浸透した雨水が下水管に発生したクラックなどから浸入してくる。不明水の浸入がある場合は,通常の最大遮集量が下水道を流れる場合には,本来より早くCSOを発生させる可能性がある。さらに,管底部に破損が場合には下水が地層中に流出している可能性がある。そのため,CSO発生量は見かけ上は減少しているようにみえる。よって,CSOによる公共用水域での水質汚濁は減少する一方,地層中への汚水の流出により土壌汚染を招く可能性がある。このような地域で管更生を実施するとCSO発生量・回数は増加することが考えられるが,敷設当時に想定された下水の流下状況に回復するものともいえる。
これらの結果から,流入不明水量が流出不明水量を上回る地域において管更生を実施することにより,CSO対策効果となりうることが確認でき公共用水域における汚濁負荷削減効果があることがわかった。

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