島倉 貴史

有線式GPS小型フロートを用いた離岸流の計測

入江 博樹

 日本海や太平洋の海岸で海水浴中に発生する事故で、岸に近い場所で遊泳していた人が沖へ流されて遭難する例がある。海で発生する流れとして、潮汐の差で発生する流れは、地形が部分的に狭くなっている場所では流れが強められる。湾の入り口付近や海底地形に変化がある箇所で発生しやすい。しかし、離岸流による事故は、日本海や太平洋の地形的に広く開けた海水浴場でも発生している。GPSを搭載したトレーサを流体の観測に利用する研究としては、時刻と場所を自動記録にGPSを活用する研究がなされている。入江らによって不知火海などの内海での潮流観測を目的としたGPS搭載小型ブイに関して研究されており、無線通信を活用した自動観測も行われている。これは、無線通信装置を搭載したブイを利用して、観測を自動的に行い、回収地点の確認を携帯電話から容易にした観測システムである。潮流の観測には1ヶ月程度を要し、最低でも12時間程度の観測が必要である。観測する範囲も沿岸から10km程度の距離が離れている。これに対して本研究では、極浅海域で発生する離岸流の観測を目的としている。離岸流は、陸上から数十メートルから200m程度までの範囲で発生し、観測時間も比較的短いことが予想される。安価で実験が容易な小型のフロートが必要とされていた。本研究では、観測機器から無線通信機を省くことで機器と電源の小型化を行い、陸上から回収可能な小型フロートを開発する。海岸付近の浅い海で発生する離岸流の速度を計測する事を目的に、小型GPSロガーを利用して位置と時刻を計測し、流れをラグランジュ的手法で計測することを検討した。陸上から安全に計測する方法として、釣り糸で接続された有線式の密閉容器にGPSロガーを内蔵した小型フロートの開発について説明した。記録した位置は内蔵メモリに記録し、無線通信を利用しないことも有線式を意味している。柏崎市の海岸で、実際に離岸流を計測した結果は、0.15m/s程度だった。小型GPSロガーを内蔵した防水容器による小型フロートは、離岸流計測に十分な性能を持っており、離岸流の計測や回収作業を容易にすることを示した。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。