kan10104

宮﨑　航

気象レーダーを用いて導出された降雪水量の正確性及び利用可能性について

熊倉　俊郎

新潟県を始めとする日本海側は世界有数の豪雪地帯である．降雪は，貴重な水資源であるが，降積雪による路面状態の悪化や路面凍結，吹雪などによる交通機関の麻痺等や，雪崩，融雪に伴う出水や地すべりなどの災害をもたらす要因ともなる．これらの災害を未然に防ぐためには，降雪状況を正しく把握し，それに対して適切に処置を施すことが重要である．
水平広域な降雪状況を把握するためには，レーダー雨量をアメダス地上降水量で補正したレーダー・アメダス解析雨量を使用することが考えられるが，その利用に際しては降水粒子の降水量計の捕捉損失の問題と気象レーダーの観測有効範囲が明らかではない問題というがあるため，それらを明らかにすることを目的とした．
前者では正しい降水量計の型式を考慮した捕捉率補正を施し，これを1km格子の全国合成レーダーデータに対して距離による重み付け補正を行い，より妥当と思われるレーダー・アメダス降雪水量を導出した．一方で後者は，地形による遮蔽領域と降水域の空間分布を客観的に考慮した遮蔽領域の導出手法を開発した．遮蔽領域は，レーダービームの下端が地形に遮られればその領域は観測できないとしたが，加えて雲からの降水の空間分布を雲量格子点情報の全雲量と雲頂高度を代用して導出し，レーダービーム高度を比較することで気象レーダーが有効的に観測できる領域を示し，レーダー・アメダス降雪水量の利用可能性について検討を行った．
その結果，降水量計の型式を考慮した降雪水量と考慮しなかった降雪水量では3割から4割程度差が生じ，降水量計の型式を考慮することが必須であることが分かった．また防災科学研究所雪氷防災センター観測による防災科学研究所雪氷防災センター，妙高笹ヶ峰の降雪水量の観測値とレーダー・アメダス降雪水量を比較した所，レーダー・アメダス降雪水量が過小評価されていたが，特に妙高笹ヶ峰地点では6割も小さかった．妙高笹ヶ峰はAMeDAS観測点からの距離が遠く，距離による補正が及びにくい領域であることが考えられる．ここで気象レーダーの観測範囲について検討したところ，雲からの降水1冬季平均の空間分布により気象レーダーの電波が遮蔽されていることがわかった．また補正が十分ではないと考えられる降雪水量が600kg・m^-2以下，標高が1000m以上と設定すれば，その領域で遮蔽領域が見られ，その領域での07/08冬季のレーダー・アメダス降雪水量は信頼できない値として除去すべきであることがわかった．

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