藤田 学斗
北陸地方の冬での降水形態の性質とその自動観測について
熊倉 俊郎
降水形態が観測される場合,固体降水で降るのか,液体で降るのかにより,地域の水の動態が大きく変化する.そのような降水形態の観測は過去から行われてきているが,多くの地域,細かな時間で行われている例は少ない.降雪が多いが比較的温暖な北陸地域では,降水形態は時間,場所により大きく異なっているようであるがそれを裏付ける観測も多くない.ここでは,自動観測や統計的な手法に基づいて降水形態の計測・推定を行い,降水形態の時空間分布を明らかにしようと試みたいが,どの手法も根本的な解決策とは言えない.よって,空間密度が必要不可欠である自動計測では,今までの効果で頻繁なメンテナンスが必要な方法に替わる安価で壊れにくい測定機器の開発を目指し,一方で,計測されていない領域の統計的推定手法を確立するために,降水形態の推定手法について考察した.自動測定機器に関しては,測定に必要な要件を検討するための数値モデルの構築を行い,現在のプロトタイプ機器の検証を行った.また,統計的な手法については,今までは,検証データとして有効に使える降水形態の測定結果がなかったが,数年前から,時間的に密な判別データの多観測点での整備が行えるようになったことから,それらのデータを用いて気象要素との比較検討を行った.
最初に,最も簡易に利用されている気温をしきい値とする方法を試み,そのしきい値が時空間的に変動していることを明らかにした.これは過去から指摘されていたが,データの数が足りないために検証が不十分であったことの一つである.さらに,数値モデルを利用した客観解析データを用いて,大気の持つ熱量,水蒸気量,熱フラックスの交換に関して検討を行ったが,直接的に良い相関が得られる物理量を得ることはできなかった.よって,現在採用されているような気象数値モデルで計算された多量の物理量を統計解析する方法よりも良い方法は今回見つけることができなかった.
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