佐藤 久

CFRPストランドシートを接着した鋼部材の剥離特性解明に関する研究

長井 正嗣

鋼橋では腐食に伴う経年劣化が生じ性能が低下していく.特に鋼橋の力学的要因による取替えのほとんどが鋼部材の腐食に起因している.力学特性を回復させるため,ボルトや溶接によって鋼板を添接する当て板補修や,損傷部材を交換する部材交換等による補修・補強が行なわれる.しかし,これらの補修・補強では,断面欠損,熱影響,大型の重機や交通規制が必要となる.そのため供用中の制約条件下で効果的な工法が求められている.そこで,鋼構造物に対する効率的かつ経済的な補修・補強方法として,現場で炭素繊維シートを接着する工法が着目されており,十分な補強効果を有することが既往の研究から明らかとなっている.最近になり,現行のCFRPシートやプレートの剥離性状や施工性などを改良するため,CFRPストランドシート(以下,SS)が開発されている.本研究ではこのSSに着目し,その剥離特性の解明をおこなった.
本研究では一軸引張試験及び等曲げ試験を行い,シートの剥離特性を解明すると共に,FEAから剥離特性の解明を目的とする.
引張試験から,SSの付着せん断応力が25MPa程度で剥離が生じる試験体が多かった.また,剥離は積層数に依存しないが,端部ずらし0mm接着した場合は多積層ほど剥離が生じやすい結果が得られた.また,鋼材厚さが厚い,CFRP幅が狭いと剥離しやすく,理論式からも引張試験同様な結果が得られた.曲げ試験から,SSを端部ずらし25mmで7層以上接着,端部ずらし0mmで5層以上積層すると応力が十分に伝達されない.従来シートでは6層以下の接着であれば応力伝達し,積層数にあった補強効果が得られることがわかった.また,付着せん断応力が25〜32MPaに達すると剥離が生じることから,引張・曲げどちらの部材についても,付着せん断応力が25MPa以上の場合,剥離が生じる可能性がある.他のパラメータについては引張試験と同様な結果が得られた.FEAから,解析値と一軸引張り試験から得られた引張応力はほぼ一致した.しかし,付着せん断応力はどのモデルも試験値の70%の付着せん断応力となった.また,引張試験の結果とFEAから得られた付着せん断応力値は同様な結果が得られたことから,FEAから剥離を評価することが可能であることが言える.シート種によって引張,曲げ試験で違う結果が得られた.これは,端部ずらしの影響よって異なる結果であったことが挙げられる.よって,端部ずらし量を変化させ再検討が今後の課題と言える.

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