大森友博

耐候性鋼材の腐食量と腐食環境に関する研究

岩崎英治

ライフサイクルコスト低減を図るために、無塗装耐候性鋼材が幅広く建設されている.耐候性鋼材は飛来塩分が0.05mdd(mg/dm2/day)以下の環境下であれば、50年後の推定板厚減少量が0.3mm(100年後で0.5mm)を超えず、概ね良好になるとの知見がある.
耐候性鋼材の主な腐食要因として海岸の波飛沫により発生する飛来塩分が上げられる.また、雨水や結露の継続時間、鋼表面温度などにより腐食状況が異なる.桁内の飛来塩分は、橋梁が建設されるまで観測できない.そのため数値シミュレーションにより飛来塩分量を推定する手法が提案されている.飛来塩分などの腐食因子と腐食量の関連性が明確になれば、前述の推定手法から桁内の腐食量を橋梁建設前に推定できる可能性がある.
そこで本研究では、風向風速、飛来塩分、温湿度、鋼表面温度、ACMセンサによる腐食環境調査を行い、ワッペン式暴露試験片により腐食減耗量を調べ、腐食環境因子と腐食量の関係を明らかにする.
本研究による知見を述べる.
・風向風速、飛来塩分、温湿度、鋼表面温度、ACMセンサから得られた腐食速度による調査を行い、桁内の部位による腐食状況の違いを確認することができた.
・風速と飛来塩分は強い相関関係を示し、飛来塩分は桁の部位により一定の比率が存在していることが分かった.
・橋梁断面周辺では、飛来塩分による風の廻り込みによる影響を確認した.また鋼材の腐食要因である飛来塩分以外の影響について確認した.
・ACMセンサから算出されたぬれ時間と、腐食速度の関係はウェブ上部、下部ともに同様なことを確認した.しかし、ぬれ時間以外の腐食因子と腐食速度は、ウェブ上 部、下部で異なることを明らかにした.
・飛来塩分と日平均腐食電気量は、観測月により違いがあるが、冬季においては明確な関係が見られる.
・腐食減耗量と飛来塩分の関係を示した.
・下フランジでは、他の部位と比較して、さび厚、腐食減耗量ともに高い値を示すことが分かった.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。