澁谷 有紀

日本沿岸域における遠地津波および近地津波,波浪の違いについて

細山田 得三 , 犬飼 直之
 
日本では古くから地震による津波が数多く発生しており,1m以下の津波でも甚大な被害を受けている.しかし「普段,天気予報などで波高3m〜4mの波浪注意報をよく聞く耳にすることがあるため,波高50cmや1mの津波も大丈夫」と考えている人が多く,波浪と津波の違いについて理解している人が少ない.そのため,津波警報を発表しても避難をしない人が多く見られ,津波による犠牲者が多くなっている可能性が高いといえる.また,地震津波には日本沿岸から600km以上離れた場所で発生した地震による遠地津波と,日本沿岸から600km以内の場所で発生した地震による近地津波がある.遠地津波の場合,地震の揺れを感じないにもかかわらず,大きな津波が襲来するため,津波による犠牲者が多くなる可能性が高いといえる.今後,津波による人的被害を減らすためにも,津波に対する知識を高めることが重要であると考えた.
そこで本研究では,津波と波浪の違いを明確にするために,津波の伝播計算を行い,遠地津波と近地津波が日本に到達する際の津波の挙動を把握することを目的とした.今回は,遠地津波と近地津波の比較を行うため,チリ地震(遠地津波)と2003年十勝沖地震(近地津波)において,津波の伝播計算を行った.津波の伝播計算には,初期波を与える際に海底地盤の隆起を用いるため,断層変位量計算により正確な海底地盤の変位量を求める必要がある.そこで,断層パラメータを用いた既存の方法(Okada 1992)により,断層運動による海底地盤の変位量計算を行い,その結果得られた地盤の変位量を初期波とし与え,津波の伝播計算を行った.
その結果,遠地津波での周期は数十分〜数時間,近地津波の周期は数分〜数十分と,遠地津波は近地津波に比べ周期が非常に長いことが確認できた.また,津波は周期が波浪の何十倍も大きいため,同じ波高でも1回の押し波・引き波で移動する水の量が波浪よりも膨大となり危険であることが確認できた.

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