ken09208

　宮坂　裕
　
　施工事例を用いた亀裂性岩盤のグラウチング施工の分析と効率化に関する研究
　
　大塚　悟
　
　ダム基礎処理工法として一般的に用いられるグラウチングは目視が不可能な岩盤内で施工されるため、施工パラメータの決定においては理論的裏付けが十分になされず、既往の施工事例や経験則等に依存しているのが現状である。この結果、期待する注入効果が得られずに追加工事が発生してしまう場合や、過大とも考えられる工事が施工されてしまう場合が発生する。さらに、建設業界を取り巻く社会情勢は、公共事業費削減という厳しい状況にあることから、コスト削減は不可欠となっている。
　このような状況を踏まえ、本研究は岩盤内に卓越した亀裂が分布する火山岩類の熔結凝灰岩を研究の対象とし、実際の注入現場において時々刻々の圧力、流量を記録した注入データと、既往の室内注入実験結果から亀裂内におけるグラウトの挙動解析し、卓越した亀裂が分布する火山岩でグラウトが遅延することなく効率的に充填させる実施要領を検討した。
　これらの連続した亀裂が分布する火山岩類での施工事例に基づく分析結果からは以下の知見を得た。
　①　原点と最大圧力を結んだ破壊後ルジオン値を採用することで、注入状況に適応した透水性が把握できる。②　破壊後ルジオン値を採用することでグラウトの粘性に影響を与える亀裂幅を定量的に把握できる。③　破壊後ルジオン値が5以上の場合は、注入開始配合をW/C=2以下とすることで、亀裂内へグラウトを効率的に注入できる。④　注入圧力は1.0MPaで目標とする範囲へグラウトは到達する。
　
　これらの研究成果から、連続する亀裂が分布する火山岩類に限定したグラウチングでは、注入仕様の決定には破壊後ルジオン値を採用し、破壊後ルジオン値が5以上の高透水部には高濃度のグラウトを低圧力で注入することで過大な範囲へのグラウトの流出を抑制するとともに注入時間を短縮し、効率的に改良効果が得られる。
　

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