ken09207

廣瀨康平

地下水によって異なる中間土盛土の地震崩壊機構に関する実験的研究

大塚悟　磯部公一

2004年の新潟県中越地震の際には長岡市高町団地において大規模盛土造成地が崩壊した．調査の結果，高町団地の盛土材料は砂とも粘土とも区別のつかない中間土であったことが分かっている．これを受け，これまで地盤材料に中間土を用いて地盤内の浸透水位に着目した振動台実験を行い，盛土の崩壊機構について検証してきた．その中で，盛土内の浸透水位の違いによる盛土の崩壊メカニズムの違いが確認された．これらのことから本研究では，盛土内の地下水位ならびに細粒分含有率を変化することによって盛土に引き起こす崩壊メカニズムの違いを検証した．
実験は，盛土内の浸透水位と細粒分の混合比をパラメータとして行った．盛土の地盤材料には東北珪砂6 号と藤森粘土を1：1の割合で混合した人工中間土（以下1：1）または，3：1で混合し細粒分含有率を変化させた人工中間土（以下3：1）を，地山には盛土の崩壊のみを比較するため全ケースで1：1の人工中間土を使用した．
その結果，盛土に作用するせん断力に着目した応答加速度倍率分布は，3：1では，浸透水位の違いによる応答加速度倍率分布に大きな差はなく，ともに地表面に向かって漸増していった．一方，1：1の低水位においては，盛土地表面と底部で飽和度分布に差があると昨年度と同様，盛土中腹部で応答加速度倍率が急増したケースもあった．このような応答加速度倍率の挙動は，飽和度分布に起因するものであり，3：1では浸透水位の違いによる飽和度分布の違いが小さいことから応答加速度倍率に大きな差が出なかった．1：1においても浸透水位が低い場合であっても高飽和度領域が広範囲に分布していると，地震動が地表面まで伝わらず，高水位のような挙動を示した．
また，過剰間隙水圧比を見ると砂分含有率の多い3：1では，水位付近あるいは水位以下では部分的（場所，程度）な液状化が確認された．1：1の場合において，盛土中腹部で大きな応答加速度を示すケースでは，盛土中腹が引っ張られることによって，膨張しサクションが発生した．崩壊形態を3：1と1：1で比較すると，3：1では盛土下段あるいは中段付近から盛土全体がすべり落ちるように崩壊するため，地山側に亀裂が発生し盛土が崩壊する．1：1は盛土下段が弱点となり，盛土上段が加振力によって崩壊し飛び出るように崩壊するため，のり肩側に亀裂が発生し3：1よりも大崩壊することがわかった．

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