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中村　孝博

模型実験を用いた浸透破壊現象の考察と数値解析手法の検討

大塚　悟

近年，集中豪雨や台風による豪雨の増加により，河川堤防の破堤が全国各地で多数発生している．そのため，河川堤防の破堤に対する防災対策は急務の課題となっている．河川堤防の破堤の要因として，①堤体内に降雨や河川水が浸透し，土の強度が低下することによりボイリングや堤防法面の滑り崩壊が生じる浸透破壊，②越流水により裏法面が侵食され，徐々に堤体が崩壊する越流破壊が挙げられる．既往の研究により，浸透によって変化するせん断強度変化を考慮した安定解析手法が検討され，その妥当性が検証されてきた．その解析手法とは，斜面崩壊挙動を斜面内浸透と斜面の安定性評価を分割して取り扱うものであり，まず，飽和不飽和浸透流有限要素解析により斜面内の飽和度・圧力水頭の時間変化を求め，次にその結果を考慮してそれぞれの時刻における斜面の安定性評価を剛塑性有限要素法により行なう手法である．このように，解析手法はある程度確立されているため，既に砂質地盤材料に対する浸透破壊模型実験事例への適応や，浸透破壊した自然斜面や自然堤防などの実地盤への適応などが試みてきた．しかし，未だ本解析手法の妥当性の検討について吟味しなければならない項目を網羅できているとは言い難いのが現状となっていた．そこで，本研究では本解析手法のさらなる妥当性の検討を行うことを目的とし，①各種地盤材料に対する適用と②構造物があるときの適応性について，本学において浸透破壊模型実験と越流破壊模型実験を実施し検討を行った．本研究により以下の知見が得られたため下記に記す．
○中間土を用いた浸透破壊現象への再現解析について
基礎地盤の有無の堤体形状に関わらず，水みちを考慮することにより，本解析手法を用いて，堤体内部の間隙水圧分布や飽和度分布などの定量的な評価が可能であれば，精度良く再現解析を行うことが出来た．
○中間土を用いた越流浸透破壊現象への再現解析について
　飽和不飽和浸透流解析と剛塑性有限要素法による堤体の安定解析を行うことによって，越流後の堤体の侵食形状と安全率の関係について定量的に評価することができた．さらに，予め越水による堤体の侵食形状が定量的に把握できれば，斜面安定解析により得られた変形図より，越流時における堤体の弱所となる部分を解析により模索できる可能性を見出した．
○矢板による強化堤体への再現解析について
無対策工の実験ケースとして，砂を地盤材料とし勾配を変化させた浸透・越流模型実験を行った結果，本解析手法を用いて，堤体内部の間隙水圧分布や飽和度分布などの定量的な評価が可能であれば，精度良く浸透破壊現象を表現することが確認出来た．しかし，鋼矢板を用いた強化堤体に対する実験ケースについて浸透流解析を行ったところ，3次元的に水の流れを考慮しなければ実験結果の値と乖離がある解析結果を得た．今後3次元的に水の流れを考慮して，浸透流解析を行い，安定解析へ反映させる予定である．

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