斉藤 美咲

地理情報システムを用いた中越地震の家屋被害の分析と危険度予測

大塚 悟  磯部 公一

 本研究では,2004年中越地震において建物被害を受けた旧長岡市の罹災証明データと,地理情報を用いてデータベースを構築し,建物被害と地形,地質などの地理情報との相関関係の分析を行った.
 データベースは,罹災証明データと株式会社中央グループの家屋敷地データを基に,数々の地理情報を加えることで,GIS上に分析可能なデータベースとして作成した.このデータベースの特徴として,罹災証明情報は,ArcMap上に分析できる緯度経度に変換することで被災家屋として作成し,かつ家屋敷地データを使用することで家屋と被災家屋との差を無被害家屋としたことが挙げられる.また,被害・無被害家屋共に位置情報を持つことで,より詳細な家屋の分析を可能とした.構築したデータベースは,市民向け防災資料として一般公開を行う予定である.本研究の成果として先ずデータベースの構築が挙げられる.
 分析では,家屋被害に影響を与える要因について明らかにした.さらに,影響を与えやすい要因を組み合わせた分析により,家屋被害に大きく影響を与える要因を検討した.その結果,土地条件図と被害との分析により,土地条件図は被害に影響を与える地形を適切に分類しており,被害を予測する項目として効果のあることを確認した.次に,この土地条件図と震央からの距離とを組み合わせて被害分析を行い,被害の増減は殆どが距離に比例するが,扇状地は距離とは無関係に被害が大きいことを示した.
 地形区分の境界領域を対象とした被害分析からは,境界領域で被災率は増加し,特に地すべり地,低位面,土石流段丘,農耕平坦化地の地形区分で被害の大きいことを示した.また,凸指標の広域建物被害予測への適用性を検討するため,凸指標の定義区間を幅広く変えて被害との相関分析を行った.この検討により,文献等で報告されている定義区間を用いた凸指標に対して,被害との相関がより強い凸指標が存在することを明らかにした.傾斜角に関して同様に,建物被害との相関が高いことから,傾斜角の定義区間を変化させて被害との相関分析を行った.その結果,定義区間を適切に設定すると建物被害との相関はきわめて高いことを示した.多変量解析による建物被害予測についても実施したが,更なる精度改善が今後の課題である.

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