伊地知 卓也

疲労損傷を受けた鋼床版の補修・補強工法適用による対策効果に関する研究

宮木 康幸

鋼床版の疲労損傷,特にデッキプレート-Uリブ溶接部に生じた疲労き裂に着目し,リブ取替え工法を適用した場合の補修・補強効果を数値解析により定量的に評価し,そのメカニズムや疲労寿命などを明確にすることで,最適なリブ取替え工法の構造を提案することを目的としている.また,首都高速道路などで適用事例が増えているSFRC敷設工法との併用した場合の補強効果についても検討を行った.本論文は1~6章から構成されている.
「1. はじめに」では鋼床版の疲労問題の背景や疲労対策等についてまとめている.また,着目部の疲労損傷に対して推奨されている対策方法から幾つかの対策工法について整理し,本研究において着目する対策工法の位置付けを示している.
「2. 解析要領」では本研究で用いる数値解析モデルの諸元や解析条件,対策効果の評価方法などについてまとめている.
「3. リブ取替え工法の補修・補強効果」では実鋼床版に生じている応力挙動の解析による再現や実験値との比較等を行った.また,健全な状態・損傷を受けた状態・リブ取替えを行った状態の鋼床版3つのモデルから応力性状・変形挙動を明確にし,リブ取替え工法の性能についてまとめ,補修・補強効果を示すとともに,ストップホール近傍(き裂先端部)での疲労寿命推定を行った結果,補修・補強効果を確認できた.
「4. リブ取替え工法の課題検討」ではリブ取替え工法適用による各部の応力・変形挙動を確認して,課題となる事項をまとめ,課題となる部位で疲労寿命推定を行った結果,リブ取替え工法は寿命が3/4倍と縮むことがわかった.また,SFRC敷設工法の併用についても検討している.
「5. 新しいリブ取替え工法」では,リブ取替え工法適用後の課題に対して複数の改善策を提案し,その応力性状についてまとめ,現段階における最も効果的な対策工を示し,疲労寿命推定を行った結果,少なくとも寿命が5/4倍は延びることがわかった.また,SFRC敷設工法の併用についても検討している.
「6. 結論と今後の課題」では,対策効果のまとめと考察を行うとともに,本研究の結論を述べた.最後に,本研究に残された課題についてまとめている.
本研究で得られた知見は,従来のリブ取替え工法は疲労損傷を受けた鋼床版に対して,補修効果としては十分に機能するが,補強効果としては取替えリブ部以外に新たな弱点部が生じるため不十分であった.しかしながら,本研究で提案した新しいリブ取替え工法は補強効果としても効果が得られることがわかった.また,新しいリブ取替え工法にSFRC敷設工法を併用することで,さらに補強効果が向上することもわかった�

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