小泉 綾香

物理系凍結抑制舗装における氷板破砕機能の検証

中村 健

 1990年に『スパイクタイヤ粉塵の防止に関する法律』が発布され,スタッドレスタイヤが普及した.それ以来,滑りやすい路面が増えて,積雪寒冷地における冬期路面管理が重要な課題となっている.このような状況下,冬期路面を改善する方策の一つとして,凍結抑制舗装の開発が進められてきた.凍結抑制舗装は,路面を暖めて融雪を行うロードヒーティングと比べると,建設コストが安価で,路面の維持管理も簡易である.このため,建設コストの縮減が求められる近年においては,凍結抑制舗装の需要は年々増加傾向にあり,冬期路面対策の中でも最も有望な方策と位置づけられている.
 凍結抑制舗装は,凍結抑制効果の発現原理の違いにより,化学系凍結抑制舗装,物理系凍結抑制舗装および物理・化学系凍結抑制舗装に分類される.本研究で扱う物理系凍結抑制舗装は,舗装体内の弾性材料が車両荷重によって変形することで舗装表面の氷板が破壊されると見込まれているが,詳しいメカニズムは未だ解明されておらず,凍結抑制効果の評価方法も確立されていないのが現状である.
本研究では,物理系凍結抑制舗装供試体として,PRMS多機能工法に準拠した供試体を使用し,氷膜破砕試験を実施,すべり抵抗値(BPN)によって物理系凍結抑制舗装の凍結抑制機能を検証した.本試験では,氷点下で供試体表面に定期的に水分を散布しながら,ホイールトラッキング試験機により荷重を加え,その後ポータブルスキッドレジスタンステスタによりBPNを測定した.供試体表面に定期的に水分を散布しながら荷重を加えることで,氷板が破砕不可能な厚さになる前に破砕され,氷板の発達を抑制することができるのではないかと考え,研究を行った.また,比較対象として,密粒混合物供試体についても同様の試験を行った.
本試験の結果より,供試体表面の水分量の増加に伴い,BPNは低下するが,密粒度混合物と比較し,高い値であることから,凍結の抑制に効果があることが確認された.また,散布水量が36 cc/hrの条件において,凍結抑制舗装の載荷箇所のBPNと非載荷箇所のBPNに有意な差が見られた.BPNの違いは,荷重載荷によって氷膜が破砕されたことにより,すべり抵抗値が変化したことを意味している.このことから,凍結抑制舗装における氷板破砕機能を検証することができた.
しかし,1時間当たりの散布水量を36 cc/hrより小さくすると,供試体表面に氷膜が生成されず,有意な結果が得られなかった.このことより,凍結抑制舗装の氷板破砕機能を検証するためには,ある水量以上の表面水の存在が必要であることが確認された.

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