菅原 千春

伸縮分散型埋設ジョイントのデータベースと維持管理システムの開発

高橋 修

道路橋のジョイント部において,問題となっている車両走行時の振動や騒音を抑制する工法として,大きな伸縮変位に対応する,格子パネルを用いた伸縮分散型埋設ジョイントが運用されている.一般に,道路アスファルト舗装の設計供用期間は10年とされており,これを受けて埋設ジョイントの供用期間も10年が期待されている.しかしながら,埋設ジョイントには一般部の舗装とは異なる外的な変形作用が働いているため,供用後10年より以前に損傷が生じ,補修が必要となる事例は少なくない.近年の建設分野に対する予算削減の影響もあり,今後はインフラストラクチャの長寿命化と合理的な維持管理技術が重要である.そのためには埋設ジョイントの供用状況を調査して,実状を把握しておく必要がある.
そこで本研究では,実際に施工管理者によって調査された全国各地の埋設ジョイントのデータを一元化し,データベースとして埋設ジョイントの維持管理に役立てていく必要がある.本研究の目的は,データベースからは埋設ジョイントの現状と特徴を定性的に明らかにし,そのうえで,埋設ジョイントの適切な補修時期を定量的に評価し,それらより得た知見を総合的に評価および検討を行い,埋設ジョイントの維持管理システムの基礎を構築する.
検討方法としては,データベースを構築し,各性状に関して分析を行う.さらに,データベースから得られた知見をより具体的な実データに基づいた根拠のある知見を得るために,埋設ジョイントの舗装体を再現した複合型供試体を作製し,繰返し曲げ試験を行った.曲げ疲労試験では,新規の状態と擬似的に破損をさせた状態と破損を補修した状態の3種類で試験を行い,比較検討を行った.
これらの検討より,以下の知見が得られた.データベースから各性状に関して分析を行うことで,埋設ジョイントの現状と特徴が明らかとなった.また,繰返し曲げ試験を行った結果,ひび割れ損傷の程度と補修効果の関係を把握し,適切な補修を行うための基礎を築くことができた.
以上の結果を合わせることで,埋設ジョイントのデータベースと曲げ疲労試験で得た結果をリンクすることができたが,実用的な維持管理システムを構築するには,データベースと室内試験による補修時期の評価との関係性に不十分な点が多い.しかしながら,今後の埋設ジョイントの維持管理システムの基礎を構築し,今後の研究につなげられる結果となった.

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