松本陽一

地方都市の郊外住宅地における持続可能性に関する研究

中出文平・樋口秀・松川 寿也

地方都市では、1970年代の人口増加に伴う住宅需要に対応するため、市街地の郊外部で住宅地開発が起こり多くの郊外住宅地ができた。これらの時代に開発された郊外住宅地では、同時期に入居が進んだため地域全体の世帯構成に偏りが生じている。そのため地域が開発されて40年近くが経つ現在では、居住者の高齢化が進み、空き家等が発生するとともに、地域コミュニティの維持や住宅の老朽化等の問題が顕在化している。自治体全体で人口が減少し、市街地縮小や中心市街地への居住が進められる中で、今後の郊外住宅地のあり方を考える必要がある。
そこで本研究では、地方都市である長岡市を対象に郊外住宅地の人口・世帯数の推移、土地利用の変化、居住者の入れ替わり状況を把握するとともに地域が持続的であるためには居住者の入れ替わりが重要であるという観点から、居住者の入れ替わりのプロセスを明らかにすることを目的としている。
研究の対象は、長岡市の1970年から1990年にかけて拡大したDID142地区の中から15地区・5地域とした。まず、研究対象地域の状況及び変化について、人口・世帯数の推移を国勢調査のデータから、次に土地利用及び居住者の変化の状況を1981年と2008年の住宅地図及び現地調査から明らかにした。そして各地域の空き地、空き家、居住者の変化があった戸建住宅の状況を不動産登記簿情報により把握し、それぞれの関係性を明らかにした。また居住者の変化についてはヒアリング調査及びアンケート調査を行いその経緯・背景を実例から明らかにした。
研究対象地域は、地域により土地利用状況や人口・世帯数の推移に特徴がある。一方で地域が開発されてから40年近く経つことから高齢化と居住者の変化が全ての地域で起きている。これら居住者変化があった戸建住宅は、対象となる戸建住宅980戸のうち3割(290戸)で起きている。その内90戸が親族間の居住変化と考えられるもの、残り200戸は第三者との入れ替わりである。これら第三者との居住者の入れ替わりは、不動産業者の仲介による住宅の購入が6割を占める。居住者の入れ替わりはヒアリング調査を主として、1)従前居住者高齢化する。2)施設や子供家族のところに転居する。3)その後不動産業者が住宅を購入する。5)新たな居住者が中古住宅で入居するといったプロセスで起きるということが分かった。また従前居住者と新たな居住者をつなぐ役割を担っている不動産業者へヒアリング調査からは、郊外住宅地に点在している空き地、空き家の情報は一部しか保有していないことがわかった。今後これらの情報が新規に居住を希望する人へ提供されることが必要である。

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