福田大輔

市町村土地利用調整計画の策定経緯及び運用実態について

中出文平・松川寿也・樋口秀

現状、土地利用規制を担っているのは都市計画法を始めとする個別規制法であるが、全国画一的に設定された基準により運用され、どの規制区域にも属さない白地地域を発生させる等、完璧には土地利用コントロールできていない。この課題に対して、各自治体が各々に適した土地利用コントロールをするために任意計画である土地利用調整計画(以下、調整計画と示す)が創設された。そこで調整計画の策定動向・運用状況を調査し、実効性を持たせた調整計画がいかに策定・運用されているのかについて、課題とその対応を交えて考察することを本研究の目的とする。
本研究では、調整計画の策定支援事業である土地利用調整システム総合推進事業を活用した自治体を対象として策定の実態を探るために調整計画書の資料収集とアンケート調査を実施し、そこから得られた知見を基に対象自治体を選定して、策定経緯・運用実態を探る実態調査をした。
その結果、支援事業を活用して策定した調整計画を有するまたは有していた自治体は支援事業を活用した139自治体中121自治体であることを示した。その中で調整計画策定に併せて条例・要綱等を策定(21自治体)、関係法令の運用見直し(6自治体)、他の行政計画と連携(40自治体)という3つの手法を活用して運用することで、調整計画に実効性を持たせた自治体があることが分かった。その一方で、これら3つの手法を活用せず調整計画を策定したに留まる自治体が40自治体存在し、支援事業の活用の仕方や策定された調整計画の熟度には差があることが明らかとなった。
これらを踏まえて兵庫県たつの市旧新宮町・高知県中土佐町・山形県山辺町を対象に、実態調査を実施した。新宮町は自主条例・調整計画による線引きによらない土地利用コントロールを目的としていたが、結果的に線引きを維持し特別指定区域で計画を担保することとなった。これに伴う計画見直しで線引き都市計画区域以外は見直しされなかった結果、調整計画は特別指定区域の指定区域のみを条例で担保することとなり、線引き都市計画区域以外は従前の個別規制法による規制のままに取り残されることとなった。中土佐町では大規模開発を抑止するために事前協議を求める条例を策定し、その審査基準として調整計画を策定したが、基準を明確に設定されていないという課題が残った。山辺町では支援事業を線引き見直しに資する都市マス策定に活用し、その後策定した地区の調整計画も実効性を担保することなく形骸化させてしまった。このように自治体固有の事情や計画の運用手法の特徴により計画策定・運用の各段階で課題があることを明らかにした。

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