西山達也
区域区分制度における開発未着手地区に関する研究
中出文平・松川寿也・樋口秀
我が国は、近年人口増加が緩やかになり、一部の地方都市では減少が顕在化している。このような人口減少が進む都市では、必要以上の市街地の拡大を抑制さらには縮小することで人口減少に対応した都市計画行政が求められる。その対応策には、一部の市街化区域を市街化調整区域に編入する「逆線引き」や基盤整備の見通しが明らかになった時点で市街化区域に随時編入できる「特定保留区域」の解除がある。しかしながら、逆線引きは、開発の大幅な規制強化を伴い地権者のデメリットとなる。一方、特定保留区域の指定解除も、将来的な市街化区域への編入により地価上昇や開発の規制緩和を期待する地権者のデメリットとなる可能性がある。そのため、地権者のデメリットを取り除いた市街地縮小方策を検討する必要がある。そこで、本研究では、3411条例の区域指定による都市的土地利用と農振農用地区域指定による農業的土地利用を活用した市街地縮小方策の実現可能性を明らかにすることを目的とする。
本研究では、アンケート調査(H20.08)で、市街化区域に編入又は特定保留区域に指定されたが区画整理事業や開発行為といった基盤整備が長期未着手となっている地区を48地区抽出した。そのうち、宅地率と農地率から特徴的な8都市15地区を調査対象地区に選定し、自治体へのヒアリング調査や現地調査により、市街地縮小方策の実現可能性に加え、その後の3411条例の区域指定と農振農用地区域指定の可能性を考察した。
その結果、市街地縮小方策の実現可能性が高い地区は、15地区中8地区存在し、その要因には地権者の事業機運の低下が挙げられ、共通して指定期日が新しい。一方、実現可能性が低い7地区は、そのうち3地区が当初予定していた事業に着手する可能性が高く、共通して地権者の事業機運が高い。残りの4地区は、県からの代替手法の提案が要因に挙げられ、指定期日が古いことが分かった。また、市街地縮小方策の実現可能性が高い地区は、その後の農振農用地区域の指定可能性が高く、地権者の営農意欲がある。しかしながら、3411区域の指定可能性が高い地区は見られなかった。この要因には、3411区域で定める指定要件に該当しない地区が多いことが挙げられる。
以上より、逆線引き又は特定保留区域解除の実現可能性を左右するのは、地権者の事業機運と自治体の意向、指定期日によるところが大きく、その後の対応として農振農用地区域指定が有効な手段であると分かった。しかしながら、3411区域の指定可能性は全地区に共通して低いため、地権者のデメリットを取り除くことはできないと考えられる。そのため、他の手法による都市的土地利用の可能性を探る必要がある。
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