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長山奈央

見附市地域公共交通におけるモビリティ・マネジメントの効果分析

指導教員：松本昌二

バス事業の規制緩和を背景に、一企業の経済合理的な判断で不採算路線を廃止することがより容易になった。その結果、地方部では運転免許を持たない人々や高齢者などの移動手段の消失が危惧されている。このような事態に対処すべく、国土交通省は平成19年10月、「地域公共交通活性化・再生事業」を開始し、地方自治体を支援している。新潟県見附市は同事業の補助を受け、地域密着型の公共交通を活性化及び再生することを目的として取り組んできた。通常の路線バスよりも小規模かつ柔軟な対応が可能となる地域公共交通「コミュニティバス」の改善もその取り組みの一つである。しかしながら、地域公共交通の採算性は極めて低く、これへの補助金の拠出が大きな財政負担となっている。
そこで本研究では、地方小都市である新潟県見附市で運行されているコミュニティバスを対象にモビリティ・マネジメント（以下MMと略記）を実施し、その効果と“口コミ”“意識”に関する因果関係、利用を誘発する要因を探るために分析を行った。本研究におけるMMの全体フローは、wave1事前調査、 wave2 MMコミュニケーション・アンケート、wave3事後調査の三段階で構成した。対象者はコミュニティバス沿線にある老人クラブ会の会員1086人である。
前後比較の結果から、コミュニティバスの利用率はwave1からwave3で52%から65%へ13%ポイント増加したことが確認された。さらに、今回実施したMMは①“他者へ利用を勧誘する”という行動変容を生じさせる、②コミュニティバスの利用経験が「ない」ままの被験者に対してコミュニティバスの分かりづらさを緩和する、③コミュニティバスの利用経験が「ない」から「ある」に変わった被験者について、コミュニティバスを将来利用しようと思う意思を劇的に増加させる、という三つの効果があったことが明らかになった。
また共分散構造分析の結果から、①“口コミ連鎖”が存在すること、②“口コミと利用経験の連鎖”が存在すること、③コミュニティバスを利用した人、他者へ頻繁に口コミを行っている人は、“将来コミュニティバスを利用しよう”と思う意識が啓発される傾向があること、④“分かりづらさの緩和”が起因となって間接的に“将来の利用意思”に繋がる、という意識構造が存在することの四つが確認された。
さらに利用経験の変化に着目した因果構造モデルを構築した結果から、一度でもコミュニティバスを利用してもらうことが将来の利用意思を形成するために重要であり、そのためには“他者からコミュニティバスの利用を勧められること”や“コミュニティバスの利便性を認識すること”が有効であることが明らかになった。
このように、分かりづらさの緩和、今後の利用意思の増加など、コミュニティバスに対する肯定的な意識を増加させるという結果が得られたことから、地方小都市である見附市で実施した無料試乗券配布を含む今回のMMは、意識変容に寄与する効果があったといえる。

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