忽那光敏

高齢者の交通行動と危険意識に関する研究

指導教員:松本昌二・佐野可寸志・土屋 哲

モータリゼーションの進展により人々の生活は大きく向上したが,その反面,交通事故の増加が大きな社会問題となっている.ハード面の整備により交通事故は一時減少したものの,事故発生件数は約76万件,死者数5155人と未だ多い.その交通事故死者数の3割以上は高齢者である.この要因として高齢化社会を背景に高齢者の人口が増えていること,高齢者の信号無視や横断歩道外での横断といったモラル不足などが考えられる.このモラル不足の原因を交通事故に対する危険意識の低下と考え,本研究では危険意識を「人が普段道路を通行する時,道路構造や交通環境,車(人や自転車)の行為に対して危ないと感じる意識」と定義し,アンケート調査を行い歩行者・自転車とドライバーそれぞれの危険意識構造を共分散構造分析を用い構築する.そして,危険意識構造を高齢者(60歳以上),非高齢者(59歳以下)で比較を行い,危険意識へ影響する要因を見つけることを目的とする.
歩行者危険意識調査では高齢者と非高齢者に分け,それぞれの指摘箇所の特徴把握を行った.そこから千手交差点と千手三叉路の間の道路で高齢者と非高齢者で指摘数の差が見られた.その要因としてこの区間では横断歩道はあるが信号機が少ないため,車の存在が気になったのだと考えられる. また,実際の事故件数と指摘数の比較では,事故が多発しており指摘の多い交差点が2箇所見られた.その交差点では,どちらも長生橋通りに位置しており交通量の多い交差点だと考えられる.また,右左折も多いことから歩行者・自転車の錯綜も多く見られた.そのため,事故件数,指摘数ともに多いと考えられる.指摘が多く事故が少ない箇所では,共分散構造を用いその他の箇所との比較を行った.そこから,どちらも自動車の存在が危険意識へ影響を与えるとともに,指摘が多く事故の少ない交差点では歩きにくさも危険意識へ影響を与えていた.
ドライバー危険意識調査からは,危険状況への質問に対しては人や車の錯綜や夜間走行が危険と回答する割合が高かった.また,共分散構造分析より総合危険度へ影響を与える因子では高齢者は錯綜と夜間走行が,非高齢者は道路構造や夜間走行の因子が総合危険度へ影響していることが確認できた.以上から,本研究はアンケート調査により,高齢者,非高齢者がどこで何に対して危険と思っているのか把握することができた.

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