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笠井孝裕

長岡市地域住民の防災意識の構造化と自主防災会の役割に関する研究

指導教員：佐野可寸志，土屋　哲，松本昌二

　近年，震度6を超える大地震が毎年のように全国各地で発生している．災害による被害を最小限に抑えるために，地域コミュニティにおける自助・共助が重要であるといわれている．現在，そのような地域防災力の向上に向けて地域住民によって組織される自主防災会の活動が注目されている．本研究では，自主防災会に着目し，長岡市で現在結成されている自主防災会活動の現状や課題を把握したうえで地域の防災力向上に向けた取り組みについて提案することを目的に，個人の地域防災力に関する意識や実際に行っている活動・対策について調査・分析を行った．
　まず，自主防災会長または町内会長への調査から，次のことが明らかとなった．長岡市で現在結成されている自主防災会は，近年の自然災害や行政からの活動支援を背景としてここ2年以内に結成されたところが多く，活動自体がまだ始まっていないことも含めて，住民の防災意識がなかなか向上しない点が多くの自主防災会の問題である．自主防災会を結成していない町内会では，訓練といった防災活動を行っている町内会は一部であり，特に，「町内会が自主防災会の役割を果たしている」という理由で自主防災会を組織しない町内会が28あったが，このうち地域活動・行事として「訓練」を行っている町内会はわずか1つしかない．このことから，町内会が自主防災会を立ち上げることの一定の意義は認められると推察される．
　次に，長岡市地域住民個人を対象として行った防災意識に関するアンケート調査をもとに，住民の視点から自主防災会の役割に関する知見を得るために防災意識構造モデルの構築を行った．その結果，まず，防災意識が高いと自己評価する人は，低いと評価する人に比べて「災害時要援護者の確認」「地域のお祭りへの参加」といった地域活動を通して培われる備えやそれに係る地域活動そのものの評価に特に顕著な差が表れていることが明らかとなった．また，共分散構造分析を用いて防災意識構造モデルを構築することで，自助的な要素，つまり，個人レベルでの防災対策が防災意識の形成に強い影響を与えていることが明らかとなった．さらに，地域防災活動の参加率を高めるために，日常からの地域でのコミュニケーションを良好な関係に保つことが最も重要であることを，数量化理論Ⅱ類を用いた予測モデルによって示した．
　以上のことより，自主防災会の役割として，災害時，避難誘導といった活動をスムーズに行えるように準備しておき，防災活動を通して日常のコミュニケーションをとる機会を増やしていくことが防災意識の向上，また地域防災活動を活性化させるために重要であると結論付けた．

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