渡邉 祐太

CeO2-TiO2複合酸化物による水質中の鉛イオン除去

佐藤 一則、テオ ワッツー

光触媒を利用した水質中の鉛イオン除去法は従来の除去法と比較し、低環境環境負荷および低ランニングコストで重金属を除去できる方法として有用である。本研究では、水溶液中の鉛イオンを効率的に除去できる光触媒の開発とその除去反応メカニズム解明を行うため、光触媒としては安価で安全である酸化チタン(TiO2)に、可視光化と反応活性化を高める目的で、希土類金属イオンのf0d0電子状態である酸化セリウム(CeO2)をゾル-ゲル法を用いて添加した場合の除去性能とそのメカニズムの解明を行った。以下に本研究で得た結論を示す。

(1) (TiO2)1-X(CeO2)X (X = 0-0.15)複合酸化物の光触媒効果を利用したPb(II)イオン除去が可能であった。Pb(II)イオンの除去において、作製(TiO2)1-X(CeO2)Xゲルに対する仮焼温度依存性を調査した結果、600℃で仮焼を行った試料が光照射による最も高いPb(II)イオン除去性能を示した。この結果はアナターゼ型TiO2母相にCeO2が均一分散した擬二元系固溶状態において光照射によって生じる電子とホールの電荷分離効率が高まるためであると考察した。
(2) Pb(II)イオンの除去において、 (TiO2)1-X(CeO2)Xに対するCeO2添加量依存性を検討した結果、10 mol%のCeO2を添加した試料が 光照射による最も高い除去性能を示した。この結果を最適量のCeO2添加によるアナターゼ結晶相の安定化と光励起電子受容の相乗効果に起因する機構によって説明した。
(3) (TiO2)1-X(CeO2)X複合酸化物粒子におけるCeO2組成の増大に対して、光照射を行わない場合にもPb(II)イオン除去量が増加した。この理由としてCeO2添加量の増大にともない粒子表面電位がより負となったためにPb(II)イオンの粒子表面吸着量が増大したことが考えられる。
(4) (TiO2)0.9(CeO2)0.1複合酸化物粒子において、光照射を行わない場合にはPb(II)イオン除去量に対する時間依存性がほとんど認められなかったことから、この粒子表面におけるPb(II)イオンの吸着平衡によって吸着量が規定されることを示した。一方、光照射を行った場合には光照射時間に対して放物線的なPb(II)イオン除去量増加を示し、途中で光照射を停止した場合には除去量増加が停止した。この結果は光照射による(TiO2)0.9(CeO2)0.1複合酸化物粒子表面での金属鉛もしくは鉛酸化物の析出成長に基づくと考えられる。

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