釣谷 拓真
ベントナイト添加アルギン酸カルシウムによる水質中金属イオン吸着
佐藤 一則
環境水域中に環境基準値を超えて存在する有害重金属イオンの効率的な除去回収が求められており、その回収手段の1つである吸着法は低濃度重金属イオンの処理が可能であるという利点がある。その吸着剤としてアルギン酸カルシウムはバイオマスで非中毒生かつ安価で安定に入手可能な材料として期待される一方で、乾燥工程による多孔率の減少が内部拡散速度を低下させ、結果として吸着速度の低下をもたらすことが知られている。
本研究では、高い膨潤性と陽イオン交換容量(CEC)を有するベントナイトに着目し、溶質の内部拡散の促進およびベントナイトによる重金属イオン吸着容量の増大を可能とする複合効果を期待し、アルギン酸カルシウムとベントナイトの複合化を試みた。そのベントナイト添加アルギン酸カルシウムビーズ(1.5A-4B)とアルギン酸カルシウムビーズ(1.5A)によるNi(Ⅱ), Cd(Ⅱ), Pb(Ⅱ)吸着性能および挙動をLangmuir吸着等温線の作成および擬二次反応速度モデルと粒内拡散モデルを用いた反応速度解析により検討した。
Ni(Ⅱ), Cd(Ⅱ), Pb(Ⅱ)単成分吸着において作成したLangmuir吸着等温線より、1.5A-4Bのそれらのイオンに対する飽和比吸着量(mmol・m-2)は1.5Aよりも高い値を示した。また、Langmuir吸着等温線における飽和比吸着量およびベントナイトの金属イオン比吸着量から算出した1.5A-4B中のアルギン酸カルシウムによる金属イオン吸着量比吸着量の概算値(mmol・g-1)は、1.5Aの飽和比吸着量よりも高い値を示した。このことから、ベントナイト添加によるアルギン酸カルシウムへの吸着促進の向上が明らかになった。
Ni(Ⅱ),Cd(Ⅱ),Pb(Ⅱ)共存溶液下において、1.5A-4Bによる総金属イオン吸着の擬二次反応モデルの反応速度定数(k2)および最大比吸着量(qe2)は1.5Aよりも高い値を示し、粒内拡散モデルへの適用によりの初期の表面吸着と飽和状態の中間を時間帯(Phase 2)が短いことから、1.5A-4Bの内部での吸着が促進されたと考察した。また、二次電子像による試料表面の観察結果から水分の蒸発した形跡を確認したことから、ベントナイトの膨潤による試料表面の空孔の拡大が内部吸着, 溶存重金属イオンの試料内部への侵入の促進をもたらしたと考察した。また、1.5A-4Bによる総金属イオン吸着量とCa(Ⅱ)放出量の擬二次反応曲線の形状が非常に類似した傾向であったことから、1.5A-4Bによる金属イオン吸着は、Caとのイオン交換により成立していることが明らかとなった。
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