平岡大雅

バイオエタノール製造工程廃水の生物学的処理に関する研究

山口隆司

 バイオエタノールは石油の代替燃料や地球温暖化の対策としてとして注目されている。バイオエタノールはカーボンニュートラル性や再生可能性を有するという利点がある。しかし,バイオエタノールは製造時に発酵残渣,蒸留廃液,洗缶廃水といった廃棄物が大量に発生するという問題がある。廃水の特徴は高濃度の有機物や窒素を含んでおり,メラノイジンやカラメルなどの生物難分解性の色素物質を含み,黒褐色を呈している。
 この廃水の処理プロセスとして有機物の除去を行う生物処理と色素の除去を行う膜処理の組み合わせに着目した。本研究では,生物処理システムとしてUASB(Upflow Anaerobic Sludge Bed ;上昇流嫌気性汚泥床), /DHS(Downflow Hanging Sponge;下降流懸架式スポンジ)/AFB(Anaerobic Fixed Bed;嫌気性固定床)を提案し,有機物処理性能及び窒素処理性能の把握と洗缶廃水処理への適用性の検討を行った。
 実験は温度条件,基質組成を変えて3段階で行った。第1段階では室温条件で実験装置は有効容積15.1LのUASBとスポンジ容積9.7LのDHS,有効容積5.0LのAFBを用いた。基質は糖蜜廃水及び蒸留廃水を用いた。汚泥の馴養と処理特性の把握を目的とした。第2段階では中温(35℃)条件で有効容積15.1Lの1stUASB,有効容積6.6Lの2ndUASBとスポンジ容積9.7LのDHS2基,有効容積5.0LのAFBを用いた。基質は蒸留廃水を用いた。有機物処理性能及び窒素処理性能,脱色性能の検討を目的とした。第3段階では25℃条件で有効容積20.6Lの1stUASB,有効容積17.8Lの2ndUASBとスポンジ容積4.7LのDHS2基,有効容積17.8LのASB(Anaerobic Sludge Bed;嫌気性汚泥床)を用いた。基質は糖蜜,発酵廃液,蒸留廃液を混合・希釈し模擬洗缶廃水とした。有機物処理性能及び窒素処理性能の検討を目的とした。
 実験の結果より,処理特性として1)UASB/DHS/AFB システムは本廃水に対し高いBOD 除去性能を有する。2)生物難分解性色素物質に由来するCOD が残留する。3)UASB は脱色性能を有するがDHS において着色を生じるため脱色は行えないということがわかった。また,処理性能として1)模擬洗缶廃水に対してCOD除去率90.1%,BOD除去率99.3%が得られ,最終処理水はBODの一律排水基準を満たす処理水質が得られた。2)全窒素の81.1%が除去できた。

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