窪田 恵一



微生物燃料電池による有機性廃水からの発電



山口 隆司



 現在の廃水処理技術は環境負荷に関する幾つかの課題を抱えている。例えば好気性廃水処理法である活性汚泥法は多大な曝気電力を必要とし、多量の余剰汚泥が発生するという問題がある。嫌気性廃水処理法であるメタン発酵は、省エネルギーであるが、処理水中の溶存メタン(温室効果ガス)の放散という問題がある。そのため低環境負荷かつ、創・省エネルギー型の廃水処理技術の開発が必要である。現在、次世代の廃水処理技術として微生物燃料電池(MFC)の廃水処理への利用が注目されている。微生物燃料電池は燃料電池の一種で、触媒として微生物を用いて廃水等の有機物分解に伴い生じる電子とプロトンから発電を行う技術である。従来の廃水処理技術に比べ余剰汚泥と、処理エネルギーの大幅な低減が期待できる。また、電気エネルギーを高い効率で直接回収できる利点も有するが、実用化には至っていない。本研究では、微生物燃料電池による廃水処理特性と処理に伴う出力特性の把握を目的とし、微生物燃料電池の中でも小型で省エネルギーである一槽型微生物燃料電池による連続廃水処理試験を行った。
その結果、運転初期こそ低い発電能力であったが、運転開始17日以降、出力密度の上昇が観察され、150日の連続処理運転の結果出力密度 0.55 W/m3、クーロン効率(発電効率) 13%、COD除去率 24%の性能を発揮した。しかし、長期運転(200日以上)に伴いメタン生成反応による有機物除去量の増加による出力密度、クーロン効率の低下に加え、プロトン交換膜の劣化による内部抵抗の増加に伴う出力特性の悪化が観察された。そこで、メタン生成反応阻害剤の添加、隔膜の交換に加え、アノード電極面積の増加による出力特性の回復、改良を図り、結果として出力密度 0.64 W/m3、COD除去率18%、クーロン効率 25%を得た。メタン生成反応の阻害により廃水処理性能は低下したがクーロン効率、出力密度の向上が可能であった。微生物燃料電池の出力特性は処理対象の廃水組成等に影響を受けるため、本研究では連続処理実験において電解質濃度や有機物組成による出力特性への影響評価を行った。その結果、電解質濃度の増加は出力特性を向上させることが分かった。また、廃水の有機物組成については酢酸等の低分子の有機物ほど分解性能が高く出力特性も向上するが、反面、酢酸由来のメタン生成反応も生じ易いことが明らかになった。

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