賀澤拓也

高温無加水メタン発酵とアンモニア除去を組み合わせた新規生ごみ処理システムの開発

山口隆司

 現在、生ごみの大部分は有用なバイオマス資源であるにもかかわらず、焼却処分されている。メタン発酵は生ごみからバイオガスを生産する資源循環型の次世代エネルギー生産システムとして注目されている。中でも無加水メタン発酵法は希釈水を必要とせず、発酵廃液の大幅な減容化,及びその処分コストの削減を可能とする。
 一方、無加水条件では代償としてメタン発酵の阻害物質も高濃度で存在する。特にタンパク質の分解に伴い生成されるアンモニアが高濃度で槽内に蓄積し、メタン発酵を阻害する。回避策として既往のアンモニア除去技術はあるものの、pH調整や発酵槽の多相化が必須であり、アンモニア除去のコスト削減、及び効率化が求められている。本論文では高温無加水メタン発酵とアンモニア除去を組み合わせた新規な生ごみ処理システムの開発を目的とし、ラボスケールでの連続処理を行った。
 その結果、バイオガス循環によるアンモニア除去効果により、発酵汚泥のNH4+-N濃度を1,800 mg/kg-w.w.以下に維持し、高温条件におけるアンモニア阻害の回避が可能であった。さらに、アンモニア除去を行った期間に槽内で生成・蓄積したアンモニア態窒素の90%以上を除去可能であった。しかしながら、硫化水素による酢酸資化性メタン生成古細菌への阻害、及び硫化物存在下における微量栄養塩のバイオアベイラビリティー低下により処理性能が悪化し、破綻した。 
 そこで、Fe、Ni、Coの複合栄養塩を添加することにより、処理性能の回復・安定化を実現し、最大許容負荷 9.6 kgCOD/m3/day、滞留時間 30日を達した。また、Ni、Coの供給によってプロピオン酸分解が顕著に進行し、処理性能の向上・安定化が可能であった。
 滞留時間75日における基質1トン当りのバイオガス生成量は201 Nm3であり、滞留時間の確保により実機における高効率メタン発酵条件(>150 Nm3)を十分満し、コストパフォーマンスの高い運転が可能であることが示唆された。
 許容負荷の限界はSRTと密接に関連し、HRTよりもSRTを長く維持することが、さらなる許容上限負荷の上昇に繋がることが示唆された。メタン発酵槽後段に沈殿槽を設け、アンモニア除去・硫化物除去・栄養塩供給・汚泥滞留時間の制御を行うことによって、さらに高効率な生ごみを対象としたメタン発酵処理の実現可能性が示唆された。

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