永田 圭

時系列MODIS観測データを用いたオーストラリア南部の作物生育状態の経年比較

力丸 厚、高橋 一義

オーストラリアは農業生産量の約6割を輸出する農産物輸出大国であり、国際的な食糧需給を支えている。オーストラリアは2008年度の小麦輸出量において世界4位、大麦の輸出量は2位を記録している。日本においても,オーストラリアからの輸入は大麦・牛肉は1位,小麦3位と,オーストラリアと日本の関係は深い.
しかしながら,近年のオーストラリアは2002,2006,2007年度と,干ばつが発生しており、作物は生育障害が起こっている。特に2006年度の干ばつは観測史上最悪とされ,降雨量は著しく減少し、生産量は前年比で約6割減少した。農産物輸出国のオーストラリアにおける不作は国際的な食料需給に大きな影響を与える。食料輸入国である日本においては,食料安全保障の観点から,オーストラリアなど、輸入相手国の作物の生育情報を得ることは重要である.
オーストラリアの農地において作物の生育情報を把握するには衛星リモートセンシングによる広域的な解析が有効であると考えられる。本研究では、空間分解能、時間分解能の観点からEOS−AquaのMODISセンサによる衛星画像は穀物の生育状態の把握に活用できると考えた.そこで、穀物の生産が盛んなオーストラリア南部に着目し,MODIS観測データから,オーストラリア南部における農作物の生育障害の把握を行うことを目的とした.時系列のMODIS観測データの赤・近赤バンドの反射係数データから植生指標値を算出し,各年度の植生指標値の経時変化を求め,年次毎の特性の把握を実施した。その結果、2006年は8月下旬に植生指標値のピークが訪れ、2008年は9月上旬にピークが訪れるという特性の違いが見られた。この特性を利用し、8月と9月の植生の差異を強調して抽出することで生育障害の発生した地域を抽出し、ヨーク半島において推定収穫量を算出した。また、2006年と2008年の年次間の差を抽出した画像を作製することで、経年比較を行った。これらの結果と現地統計データ、栽培暦等と比較検証を行った。時系列MODIS観測データから推定した植生指標値の季節変化は現地の栽培暦と対応する結果であった。また、推定した推定収穫量においては推定誤差が5[%]という結果が得られた。生育障害が発生した地域は、現地の調査報告書と合致するものであった。

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