棚橋 貴博
スギ林撮影画像における雄花領域抽出用の汎用アルゴリズムの検討
力丸 厚、高橋 一義
近年、スギ花粉症患者の数は増加の一途を辿り、社会的に大きな問題となっている。現在、スギ花粉の飛散量予測はスギ雄花着生状況調査(以下従来調査)という目視による調査が行われている。その結果からスギ花粉の飛散量を推測し、情報を発信している。しかし、従来調査は目視調査のため調査員の主観的判断や、スギ林を面ではなく点で観測しているといった課題が存在している。
以前に武藤らがスギ雄花抽出手法の開発に取り組んでおり、精密法、簡便法という2つの抽出手法を開発している。本研究は、新たなスギ雄花領域の抽出手法の考案、検討に取り組んだ。また、様々な画像に対応でき、判定者による抽出結果の変わらない汎用アルゴリズムの開発を最終目標とした。スギ雄花領域抽出手法をRG探索法と制限法の2つを検討した。
RG探索法では、まずスギ林構成要素を、黄色雄花、枝等、葉の3つに定めた。解析範囲におけるRed、Green(以下R、G)の2次元の特徴空間上で、スギ林構成要素の代表値を設定し、それらの代表値からユークリッド距離を計算して、各画素を最短距離の構成要素に分類する。分類した構成要素毎に平均値と標準偏差を計算し、この平均値を新たな構成要素の代表値とする。次に、構成要素の代表値から標準ユークリッド距離を計算し、各画素を最短距離のものに分類する。再度、構成要素毎の平均値と標準偏差を計算して、この平均値を構成要素の代表値とする。この過程を繰り返して雄花探索を行うのがRG探索法である。
RG探索法では単純に黄色雄花の代表値と画素値とのRG空間上の距離が近ければ黄色雄花と判定されていた。この問題点を修正するために考案した手法が制限法である。計算した黄色雄花のユークリッド距離、標準ユークリッド距離に画素値の黄みに応じた重みをかける手法である。
考案した2つの手法での雄花抽出結果の比較を行い、基準画像を用いて精度検証を行った。また、武藤の考案した精密法、簡便法との比較を行った。その結果、RG探索法は、最高で75.5%の雄花領域を抽出することができた。しかし、陰にある雄花を検出できなかった箇所が多かった。制限法はRG探索法に比べ、スギ雄花として判定した箇所の誤差は減少した。しかし、検出できた雄花の領域が減少してしまった。
RG探索法、制限法の評価としては、武藤の考案した精密法、簡便法に比べて、より少ないパラメータ数で、精密法と簡便法同程度の検出精度が得られた�
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