松浦 祐樹

北陸地域の地形の水平解像度特性と局地気象モデルへの応用

熊倉 俊郎

日本は国土の半分が多積雪地帯に指定されている多積雪国である。雪害は雪崩、路面凍結、視界不良など多岐に渡り、雪害対策は直接的に雪害を防ぐハード対策と間接的に雪害を防ぐソフト対策の2種類に大別される。ソフト対策のひとつとして気象庁が開発した降雨、降雪など様々な気象情報を予測する局地気象モデル(NHM)が現在も天気予報などで現業利用されている。本研究ではNHMの設定データである水平格子間隔に着目した。水平格子間隔は地形の表現力や計算速度などに影響を及ぼすが、明確な理由なく決められていることが多い。このため、モデルの正確な計算を行うには用いている格子間隔がどの程度地形を表現できているのか把握して水平格子間隔を設定する必要がある。本研究では地形の特徴を示す空間スケールについて波数空間で表現すると定量的に求められるということを用いて、対象とする領域に対し2次元フーリエ変換を行うことでパワースペクトルを求めた後に、対象領域内において数値地図、モデルそれぞれが表現できる地形の総エネルギーを求めた。地形のエネルギーは東西、南北方向に対象地域のパワースペクトルについて積分を行うことで求めた。また、実際にNHMを用いて計算結果における地形の影響力を検証するために、山古志地域を対象として、地形データを1kmグリッド,3kmグリッド,5kmグリッドの3種類の解像度を用いてNHMによる風速計算をおこなった。予報時間は3時間とし、予報結果は1時間間隔で出力するものとした。また、側面境界条件は雪氷防災研究センターの計算結果から計算した。本研究においてスペクトル解析を行った結果、すべての解析結果において、パワースペクトルは波長が長くなるにつれ増大していく傾向がみられた。また、スペクトル解析から求めた地形エネルギー比についてはどの領域も格子間隔が大きくなるにつれ一定間隔で減少していき、ある格子間隔を超えると表現力の減少の傾きは大きくなること、しかしその変曲点および地形の表現力の推移は地域毎に特有であるという結果となった。また、山古志地域において風速計算を行った結果、グリッド間隔1kmと3kmの地形データを比較したところ最大で約2m/s、1kmと5kmの地形データを比較したところ最大約3m/sの差があった。また、風速の差は特に山地において大きく現れた。このことから、モデルを用いて正確な計算を行う際には地形データの影響の観点から、より地形の表現を正確にすること、ひいては地形を正確に表現することのできる水平格子間隔を設定することが重要だということが見出せた。

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