佐藤 巧

流出境界に再流入が発生する噴流の数値計算

楊 宏選

乱流噴流は、流体機器や河川・海水中への排出など様々な応用がされており、その特性を知るために静止環境における噴流の数値実験が行われる。これは一般的に有限空間内で行われるが、このとき流出境界から再流入が発生すると渦が発生して流速値が発散してしまう。これを解決するために面対称の2次元モデル、軸対称の3次元モデル、さらに各々の幅(半径)を2倍にしたモデルをそれぞれ生成し、領域内に流れ(U0)を与えて対称軸側から噴流(Uj)を出して流速を計算。その後計算結果(U)からU0を引いて流速(Us)を算出し、この流線、流速ベクトルを可視化、平均速度分布をグラフ化して実測値と比較することでUsを評価した。なお、本研究ではこれらの作業に"OpenFOAM"を用いた。
OpenFOAMとは有限体積法に基づいて連立偏微分方程式を簡単に解けるソフトウェアである。これは方程式を独自のプログラム言語で表記することで流体の流れや経済の支配方程式など様々な現象をシミュレートできる。
計算には支配方程式として非圧縮性流れのNavie-Stokes方程式と連続の式、標準k-εモデルのパラメータの輸送方程式を用い、Navie-Stokes方程式と連続の式を連立して解くためにSIMPLE(Semi-Implict Method for Pressure Equation)法で行った。
Usを見ると、2次元モデルでは流線と流速ベクトルから流出境界からの再流入が見られ、平均速度分布からUsには流速の計算結果として十分信憑性があるといえる。また、他のモデルにおいても同様の結果が得られた。
ここで、今回の計算方法を評価するためにUsを支配方程式に代入して成立するかどうか分析したが、連続の式以外にU0を含む項が残り、Usには本来得たい結果とU0に起因した差があることがわかった。
この差を小さくするためにはU0の値を小さくすれば良いはずだが、U0は元々計算前に再流入が発生しないように設けたものなので、これが起こらない程度でU0を小さくする必要がある。そこで、今回生成したモデルにおいてUj−U0=0.4[m/s]となるようにどこまでU0を小さくできるのか検討した。
結果として、2次元のモデルではU0を半分以下に、幅を2倍にするとさらに小さくすることができ、それだけ差を小さくできた。3次元モデルになると先のモデルよりもU0が小さくなった。
総じて、流出境界から再流入が発生している状態の流速を計算することができた。また、計算領域を大きくするほどに本来得たい結果に近づけることができ、今回行った方法が少なくとも噴流の数値計算法として有用であることがわかった。

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