大倉 走

高解像度化した局地気象数値モデルによる地上風速の推定に関する研究

熊倉 俊郎

新潟県をはじめとする日本海側の豪雪地帯は冬期の降水量が多く、雪崩や道路雪氷障害等の災害をもたらす要因であるため、降雪・積雪の状況を正確に推定し把握することは非常に重要である。積雪水量の導出には、アメダス地上観測降水量で補正を行ったレーダー・アメダス解析降水量が使用されているが、アメダス観測にも降水量計の受水口付近の気流の乱れにより、捕捉される降水量が真の降水量よりも小さくなるという問題が存在するため、風速による捕捉率補正をアメダス地上観測降水量について行うことが必要である。よって、降水量のみを計測しているアメダス観測点で降雪量を見積もるためには風速が必須であるため、本研究では気象数値モデルによる地上風速の推定を目的とした。風速は局地的な地形の影響を顕著に受けるので気象庁非静力学モデルを使用した。また、局地気象数値モデルでは地球表面の一部分を切り取って領域を取るので、側面境界条件が必須である。ここでは雪氷防災研が行った数値解析結果(NS012新潟)を使用し、ある時刻の風速を初期条件、境界条件一定で定常状態に達するまで力学のみの計算で求める手法により、柏崎、高田、長岡、小出、湯沢、津南の6地点で風速を推定した。そして、風速推定値を用いて捕捉率補正を行った積算降雪水量を算出し、アメダス観測風速を用いた場合と比較することで、数値解析による風速推定の妥当性について検討した。その結果、風速水平分布は、「NS012新潟」では風向、風速とも一様分布であったのに対し、局所的な変化が顕著に表現されるようになった。そして、風速推定値とアメダス観測値とを比較した結果、2日間以上にわたって欠測がある小出を除いた5地点では、アメダス平均風速2.8m/sに対して、ME=0.4m/s、RMSE=1.7m/s、CV=69%という結果で、「NS012新潟」に比べてMEで約1m/s、RMSEで約0.7m/s、CVで約30%向上した。地点別に見ると、柏崎、高田、長岡におけるCVは40〜56%、湯沢、津南ではCVは約100%という結果で、標高が低く、平野部に位置する地点の方が精度は高かった。積算降雪水量については小出を除いた5地点での平均値が172kg/m2であるのに対し、誤差は約5%であり、「NS012新潟」に比べて約16%精度が向上した。また、1要素観測点である塩沢で風速推定を行った結果、積算降雪水量は238kg/m2という結果で、捕捉率補正を行わない場合よりも約80kg/m2大きく算出された。

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