ken08605

村松真伍

鉄筋腐食の空間的分布が鉄筋コンクリート構造物の耐荷性状に及ぼす影響

下村　匠

近年、鉄筋腐食によるRC構造物の力学性能の低下を定量化する研究が精力的に行われている。特に、主鉄筋が腐食したRCはり部材の曲げ耐荷性状に関する研究は数多く行われている。その結果、定着部破壊や鉄筋破断のおそれがない場合、曲げ耐力等の腐食後の部材の耐荷性状は、主鉄筋の平均断面減少量を考慮することで概ね評価ができることが知られている。
しかし、多くの既往の研究では、実験室内における理想的な実験が行われている。既往の研究では、単鉄筋のRCはり試験体に一様な腐食を導入した場合が多いが、実構造物においては複数の鉄筋が配置されており、部材位置や環境によっては鉄筋が部分的に腐食することが考えられる。
そこで本研究では、部材中における鉄筋腐食の空間的不均一性の影響に着目する。電食によってRCはり試験体内の複数の軸方向鉄筋の腐食の程度を独立に制御することで、腐食が空間的に不均一なはり試験体を作製し、曲げ載荷試験を行い、その耐荷性状を検討した。
あわせて、本研究ではコンクリート中の鉄筋の腐食がRC部材の力学性状に影響を及ぼす因子のうち、鉄筋の断面積減少と腐食生成物や腐食ひび割れによる付着劣化の影響を独立に検討する実験を行った。通常これらは同時に生じるため、それぞれの影響を独立に検討することは難しく、検討例は極めて少ない。本研究では、コンクリート打設前に腐食を導入した鉄筋を用いることにより、腐食による付着劣化の影響を排除した腐食はり試験体を作製し、曲げ載荷試験を行いその耐荷性状を検討した。
それらの結果、鉄筋腐食の空間的分布が部材の構造性能に及ぼす影響は小さく、部材断面における主鉄筋総断面積を考慮することで曲げ耐力を概ね評価できることがわかった。また、付着劣化はひび割れ分散性に影響を及ぼすものの、主鉄筋端部の定着が保たれている場合、曲げ耐力への影響は小さいことがわかった。
さらに本研究では、鉄筋腐食、腐食ひび割れなどの材料劣化のばらつきに関する検討を行った。
その結果、鉄筋軸方向の腐食量分布は平均腐食量とその標準偏差に比例関係が認められた。また、本研究の条件下では軸方向150ｍｍ以上の空間における鉄筋の腐食量と腐食ひび割れ幅の平均値を用いることで両者の関係が明瞭となった。これより、鉄筋腐食量や腐食ひび割れ幅など部材中の劣化指標はある程度の領域の空間平均値を、定量化の指標と考えることが有効であると思われる。

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